セター首相、ICE車への支援継続を表明、アジアの域内投資拡大

セター首相、ICE車への支援継続を表明、アジアの域内投資拡大

公開日 2023.10.03

9月30日付バンコク・ポスト(ビジネス1面)によると、セター首相は29日に開催されたフォーラムで講演し、電気自動車(EV)へのスムーズなシフトに向け、タイ政府は日本政府に対し今後10~15年は内燃機関(ICE)車への支援を継続するとの方針を表明した。同首相によると、タイ政府はICE車メーカーが輸出向けの生産拠点をタイにシフトさせるための投資恩典を提供する予定だ。また、日本がEVの取り組みが遅れる可能性がある中で、タイのEV市場で日本が不利になることが懸念されているとした上で、「私は12月に日本を訪問する。タイ投資委員会(BOI)が過去数十年、われわれを助けてくれた日本政府や日本の投資家の寛大さをタイ政府が忘れることはないと確認するだろう」と訴えた。同首相はさらに、ICE産業は大きなサプライチェーンを持っていることから、訪日する12月までに、ICE車の生産ハブとしてのタイの地位をどう保つかについて自動車関係業界と協議する見込みだと明らかにした。


9月27日付バンコク・ポスト(ビジネス3面)によると、工業団地・倉庫事業大手WHAグループのジャリーポーン会長は、米国のハイテク企業は東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国での事業機会に関心を持っており、タイは来年にも米ハイテク企業の投資を呼び込めるだろうとの期待を表明した。タイのセター首相が9月18~24日に国連総会出席で訪米した際に行われた米グーグル、マイクロソフト、テスラなどのハイテク企業幹部との投資会議にWHAも同席。これらの企業はカーボンニュートラルの取り組みを支持する中で外国企業の投資に対応できる十分な再生可能電力を供給できるか知りたがっていたという。同会長は、「WHAは自社の工業団地で太陽光・水力発電を含む再生可能電力施設を開発してきた。その発電能力は現在192メガワット(MW)で、これを300MWに増強する目標を設定している」と強調した。


英エコノミスト誌9月23日号は、巻頭記事と表紙でアジア経済の現状を概観している。タイトルは「アジアの経済革命が世界に意味するもの」で、副題は「域内の結びつきがより強くなっている。しかし、米国の損失はすべて中国の利益につながっているわけではない」だ。

同記事は「“ファクトリーアジア”というフレーズは歴史上もっとも印象的な経済発展の一つだ」と指摘。過去半世紀、日本、韓国、台湾、そして最近では中国が工業製品の活気のある生産ハブとなり、特に裕福な西欧など世界の他の地域に輸出してきたという。そして1990年にはアジアの貿易額のうちに域内貿易が占める比率は46%だったが、2021年には58%まで増加し、欧州に次ぐ統合化された大陸となったと指摘。「アジア企業は自らの近隣国への熱心な投資家になった」とし、アジア人の他のアジアの国に対する外国直接投資(FDI)は欧米の投資家のペースより早く倍増したと報告した。国際通貨基金(IMF)はアジアの新興国、開発途上国の今後5年間の経済成長率は4.5%と、先進国の3倍速いペースになると予想しており、豊かになった消費者は隣国からより多くを購入するだろうとしている。ただ、政治的には、欧州のようにアジア各国の経済的つながりの深化は政治統合には反映されないとの見方も示した。これは欧州が新たな大戦を避けるために政治統合を加速させたが、アジアにはそうした動機はなく、政治システムもばらばらなためだとする。

一方、米国はアジアでの重要な投資家の地位を維持するが、経済的・政治的なアジアへの傾斜はなくなり、金融影響力の喪失で、アジアのブームからの利益は少なくなるだろうと指摘。しかし、これはアジアを中国が支配することを意味するわけではないという。それは、中国は貿易拡大と「一帯一路」戦略により影響力を増してきたものの、アジア各国にとって、特に習近平国家主席の外交政策がより不愉快なものとなり、中国を警戒しているためだとする。その上で、日本や韓国のような豊かで成熟したアジアの民主国家が、重要な中国の対抗勢力となると強調。ISEAS-YUSOF ISHAK INSTITUTEによる東南アジア諸国連合(ASEAN)市民への世論調査結果に言及し、日本の東南アジア地域での長年の開発援助が、同地域の指導者がなぜ日本を最も信頼しているのかを説明するのに役立つとの見方を示す。さらに、日本と韓国は中国に対してよりも米国に対して友好的であることが背景だと説明。そして、「米国のアジアでの経済影響力が相対的に弱まる中でも、米国はパートナーを通じて依然、影響力を行使できる」と結論づけている。

TJRI編集部

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