タイのシルバー経済とは、「大麻常習者は安堵」

タイのシルバー経済とは、「大麻常習者は安堵」

公開日 2023.09.12

9月7日付バンコク・ポスト紙(ビジネス2面)は、「タイのシルバー経済:トレンドとチャンス」と題するデロイト・タイランドの寄稿記事を掲載している。同記事は「シルバー経済は企業にとって大きなテーマだ。「高齢化社会」から「高齢社会」に移行するまでにフランスは45年、英国は69年、米国は115年かかったが、タイは19年だ」と話を始める。そして、高齢化社会、高齢社会、超高齢社会の国連の定義を説明する。

出生率の低下の一方、死亡率が上昇するという世界的トレンドの中で、高齢の個人と企業はともに働き方と退職年齢の引き上げを検討しているという。退職年齢が上昇しているのは、①生活コストの上昇により、人々はより長期間働くようになっている。英国では新型コロナウイルス流行時には50歳以上の退職者は職場復帰した②アジアでは労働人口の減少で労働者不足となり、企業がより高齢者を雇用するようになった③中国、日本、韓国では高齢者の急増により政府が退職年齢を引き上げている-という3つの理由があると分析する。

タイの社会開発・人間安全保障省の統計では、タイの2022年時点での60歳以上の人口は約1270万人と、総人口の19%に達するという。この60歳以上の高齢者の収入(シルバーインカム)の3分の1は仕事から得ており、3分の1は子供たちからの仕送りだ。しかし、この仕送りを受けている高齢者の5分の1はその収入は年間で1000~4999バーツにとどまっているという。さらに、仕事をしている高齢者の主要業種は農水産業(60.5%)とサービス・小売業(18.2%)で、タイプ別では65%が自営業、19%が無給でのファミリービジネスの手伝い、13%が公務員と会社員、3%が経営者だとしている。

そして同記事はシルバービジネスのトレンドとして次の5つを挙げている。①ヘルスケア=高齢者ケアサービスの新しい形を構築できる②不動産=高齢者向け住宅、介護施設、シルバーコミュニティーすべてに可能性がある③娯楽・自己啓発=高齢者向けの観光、学習、工芸、スキルアップ活動④電子デバイス=高齢者向けのトラッキング・医療機器の需要は増加する⑤法律コンサル=「生前遺言」のアドバイスを求める人が増加する⑤金融商品=高齢者向けのリバースモーゲージ、保険などだ。そして同記事は、タイの将来の人口動態への挑戦のチャンスは極めて大きいと強調している。


英エコノミスト誌9月2日号はアジア面で「タイのマリファナ(大麻)産業は今どうなっているか」という記事を掲載している。副題は「新政権が発足する中で規制はバンコクのカフェのようにあいまいだ」。同記事は、「スクンビットの訪問者は長年、偽ロレックス時計やさまざまなマッサージ屋に誘惑されてきた。過去1年間はこれに大麻が加わった」と話を始める。そして、「タイ全土で、カンナビス店が約1万2000店舗オープンした。100万人がカンナビスの栽培許可の登録を済ませ、旅行者はこれを吸おうと群がってきている。大麻産業は2022年末までに年間8億ドルを売り上げたが、2030年までに12倍に拡大すると予想されている」といったデータを紹介する。 その上で、「こうした市場急拡大は違法だ。カンナビスの購入は医療目的であり、テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量は0.2%以下に制限されている。しかし、大麻店はTHCが25%含まれる「ガンチャー」だと宣伝し、販売している。保健当局や宗教団体は人々が危険なほど麻薬中毒になりつつあると警告。多くの企業が安い麻薬を輸入して価格を引き下げている」などと報告している。

一方、総選挙前には、今回政権を取ったタイ貢献党を含む複数の政党がカンナビスを禁止するか、規制すべきだと訴えていたが、セター新首相がこの方針を追随するかどうかは不透明だと指摘。「連立政権は政策課題で混乱している。カンナビスの解禁を主導してきた政党(タイ誇り党)の党首であるアヌティン氏はセター政権の副首相だ。タイの大麻常習者は多分、安堵できるだろう」とシニカルに結んでいる。

TJRI編集部

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