前進党は米国や中国とのバランス維持を

前進党は米国や中国とのバランス維持を

公開日 2023.07.04

6月26日付バンコク・ポスト紙(ビジネス1面)は、「Horns of a dilemma」というタイトルでタイ経済の中国依存について論じた長文の分析記事を掲載している。同記事はまず「前進党が依然、新政権樹立の準備を進める中で、タイ・中国の経済関係の新チャプターをめぐる新たな懸念が表面化している」と話を始める。前進党は平和と繁栄を確保するために中国との協力関係強化も主張しているにも関わらず、アジア太平洋地域最大級の多国間合同軍事演習「コブラゴールド」の大規模化により、米国との安全保障面での連携を強化するとも提案しており、タイと中国の貿易関係に影響を与える1つの要因になるとの批判が出ているという。

私立パンヤピワット(PIM)経営大学の学長で中国経済の専門家であるソムポップ氏は、タイ経済は農業・観光分野をベースとしている限り、タイは世界の貿易大国である中国とは分断(decouple)できないと指摘。一方、金融とサービス業の世界のハブである米国ですら、中国との貿易額は年間7000億ドルに達し、中国とは分断できなかった。さらに、米国のブリンケン国務長官が先週、中国を公式訪問したことで、さらなる貿易関係の協力拡大につながる可能性もあるという。

タイと中国の貿易額は年間1000億ドルで、タイの総貿易額5000億ドルの5分の1に相当する。ソムポップ氏によると、ベトナムはタイよりも中国への依存度は高く、ベトナムの全輸出額の18%、全輸入額の30%が対中国であり、さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)にとっては13年連続で中国が貿易相手国のトップだ。また、タイへの外国直接投資(FDI)では日本が依然、3分の1を占めトップだが、2位の中国の投資における重要性は増しているという。

このほか、タイ商工会議所(TCC)のサナン会頭も中国はタイの主要貿易相手国であり、特に電気自動車(EV)工場への投資のリーダーになっていると指摘。さらに外務省とともに、両国間の貿易・投資の拡大を目指し、現在、北京などでの投資家説明会の開催を計画していることを明らかにした。

一方、タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ会長は、「もし新政権が米国との安全保障面での連携を強化するような論議を呼ぶ姿勢を追い求めた場合には、中国政府のタイのポジションに対する受け止め方に影響を与え、最終的にはタイに好ましくない経済的打撃を与えるだろう」と警告し、新政権は米国や中国とのバランスを注意深く維持すべきだとの認識を示した。また同会長はペルシャ湾岸6カ国が加盟する湾岸協力会議(GCC)などの新たな貿易相手国を探すべきだとする一方、「世界経済が減速する中で、中国に代わる新たな市場を見つけるのは容易ではない」と強調した。

6月26日付バンコク・ポスト紙(1面)によると、25日にタイ中国商工会議所の主催で開催された「第16回・世界華商大会」(WCEC)」でタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループのタニン会長は講演し、中国企業・投資家はタイのハイテク工業ハブとなる東部経済回廊(EEC)への投資機会を逃してはならないと呼びかけた。同イベントには世界50か国から華人系企業家3000人以上が集まったという。タニン会長は中国と米国の貿易戦争が激化する中で、すべての国は、技術とサービス分野の改善に関心を向けるべきだと強調。また、日本がタイの製造業のハブとしての能力を構築するために投資してきた一方で、タイへの外国直接投資(FDI)では2位の中国がタイの将来の方向を決める重要な役割を果たすことができると訴えた。タニン会長がこのイベントで華人系企業に対し今さらながらEECへの投資を改めて訴えた背景には、CPグループが主導する3空港連結高速鉄道計画が難航していることもあるのかどうかと勘ぐってしまう。

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TJRI編集部

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