インドネシアのEVハブ化への課題は環境問題

インドネシアのEVハブ化への課題は環境問題

公開日 2023.04.04

4月1日付バンコク・ポスト紙(9面)は、マレーシアのトムソン・ロイター財団の特派員マイケル・テーラー氏の「インドネシアのEV目標はグリーン鉱業の加速次第だ」と題する寄稿記事を掲載している。同記事はインドネシアは電気自動車(EV)の主要原料であるニッケルの埋蔵量が世界最大で、EV生産ハブを目指しているが、「EV生産ハブになるために必要な投資を呼び込むためには過去に経験した環境面での失敗を避けなければならない」と警鐘を鳴らしている。過去の失敗とは、長年のスズ採掘で跡地を月のような索莫とした風景に変えてしまったことだという。

インドネシア政府は3年前に総額150億ドルのバッテリーとEV生産の案件で合意し、ジョコ・ウィドド大統領は個人的にも、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に投資するよう説得してきたという。一方で、投資家らは自らの評判を守るために、環境や法律順守をめぐる懸念を強めているという。

ダブリン市立大学のダニー・マークス助教(環境政策)は、採掘は依然大きな環境面での課題に直面していると指摘。インドネシアのスマトラ島南岸にあるバンカ・ベリトゥン島でのスズ鉱山での不法採掘が森林とサンゴ礁を破壊し、選鉱くずや大きなクレーターなどが残ったという。同助教はインタビューで、「インドネシアは、多くの採掘事故による多数の死者を出し、また児童労働とも関連し、バンカ島の風景を殺伐なものにしてしまったスズ鉱山での経験から学ぶべきだ」と指摘。「EV企業はサプライチェーンが同様に汚されたものになることは望んでいない。インドネシア政府は、同様の問題がニッケル採掘から発生しないように環境保護を強化すべきだ」と訴えた。

一方、米コンサルティング会社マッキンゼーによると、2022年時点での東南アジアのEV比率は2%未満でしかないが、各国政府はEVやバッテリーメーカーへの優遇措置や購入者への税制優遇策を導入している。特にインドネシアはバッテリー生産とEV組み立てへの投資を誘致する一方、ベトナムとタイは、EV組み立てとパワートレインなどのビジネスを既に獲得しているという。アナリストらは、バッテリーグレードのニッケル生産は温室効果ガスの排出量が多いため、インドネシアは、テスラなどを誘致し、野心的なEV目標を達成するためには石炭火力発電所から再生可能エネルギーにシフトしなければならないと助言している。

そしてマークス助教はインドネシアの一部のニッケル鉱山は無許可で操業し、保護地区の森林破壊、土壌汚染、海洋汚染をもたらし、地元漁師の生活に打撃を与えているとし、「インドネシアは環境保護策を大幅に強化し、これらの鉱山の監視も強化する必要がある」と結論付けている。


バンコク・ポスト紙は3月18日のビジネス4、5面で、インドネシアのニッケル鉱山の現場からのAFP通信のリポートを転載している。タイトルは「インドネシアの農民はニッケル採掘ブームの中で農地のために戦っている」というものだ。同記事の書き出しは、インドネシアのワオニー島の農地の丘の上で、「マシェティ(サトウキビ収穫用の鉈)」を手にした3人の女性が森林を伐採しているニッケル鉱山労働者の方角に刃を向け、「もしこの土地を搾取するなら、彼らの首が飛ぶだろう。われわれはこの土地を死ぬまで守るだろう」という過激な表現で現場の深刻さを描写している。同記事によると、住民や人権グループはAFP通信に対し、ニッケル採掘ブームが農家の地権の脅威となり、資源の豊富なスラウェシ地域のワオニー島などの環境に悪影響を与えていると訴えている。

TJRI編集部

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