世界の製造業は中国から「Altasia」へシフト

世界の製造業は中国から「Altasia」へシフト

公開日 2023.03.08

英エコノミスト誌2月25日号はビジネス欄の「The Altasian option」というタイトルの記事で、世界の大手企業が製造拠点を中国から他のアジア各国にシフトしつつあるトレンドを解説している。“Altasia(n)”とはAlternativeとAsiaを組み合わせた造語か。

同記事は、「パナソニックは1987年に挑戦的に中国に賭けた。このころは母国の日本が世界の製造業のパワーハウスで、中国経済はカナダより小さかった。同社はテレビ向け陰極製造の合弁会社を北京に設立し、注目を集めた」と歴史を遡る。その後、中国の豊富な労働力と低賃金を目当てに家庭用電子製品製造大手の中国進出が相次ぎ、約35年後には中国は家庭用電子製品産業の要となり、2021年には世界の電子製品輸出総額3兆3000億ドルのうち1兆ドルは中国からの輸出になっているという。

しかし中国の製造業の平均賃金が2013年から2022年まで倍の水準である時給8.27ドルまで上昇し、「もはや中国の労働力は安くない」状態となり、外国企業の中国脱出が始まったと指摘する。ちなみに、同記事ではHarver Analyticsによる、アジア各国(中国、インド、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム)の製造業の賃金の推移の比較グラフを掲載しているが、2022年の時点でタイがフィリピンを下回り最低となる一方、ベトナムが中国に次ぐ2位となっているのに驚く。これには為替レートの変動の影響もあるかもしれないが。

そして帝国データバンクによると、中国で事業を行っている日本企業数は2020年の1万3600社から2022年は1万2700社に減少。そして、ソニーは1月29日に日本や欧米で販売するカメラの製造拠点を中国からタイに移転する計画だと発表したほか、韓国サムスン電子が中国内の従業員数を2013年のピーク時以来、3分2以上削減しているなどのニュースを紹介している。

その上で、「中国の巨大な製造拠点を一国でまかなえる国はないが、アジア各国をつなぎ合わせれば、手ごわい代替拠点にもなる」とし、具体的には日本の北海道から、韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、カンボジア、バングラデシュ、インドのグジャラート州などの国・地域名を挙げる。これがAltasiaで、労働人口(15~64歳)は中国の9億5000万人を上回る14億0300万人となる一方、主要労働者(24~54歳)数は中国が1億4500万人、Altasiaが1億5500万人とほぼ同水準、さらに米国向け物品輸出額もAltasiaが中国を上回るなど、「Altasiaのサプライチェーンは中国にほぼ匹敵するようだ」との認識を示している。

同記事はAltasia地域には既に、地域的な包括的経済連携(RCEP)やインド太平洋経済枠組み(IPEF)、環太平洋連携協定(TPP)などの自由貿易圏があり、経済的に統合されつつあり、何十年もかけて東南アジアにサプライチェーンを構築してきた日本企業のようなAltasiaの先行モデルもあると強調する。そして、Altasia地域への最近の進出事例として、地政学的にセンシティブな半導体を挙げ、マレーシアが既に世界の半導体(価値)の10%を占め、米国を上回っていることや、米クアルコムが2020年にベトナムに初の研究開発(R&D)センターを開設したことなどを紹介している。


3月2日付バンコク・ポスト紙は1面と3面で、最大野党のタイ貢献党の首相候補の一人とされる、住宅開発大手センシリの社長兼最高経営責任者(CEO)のセーター・タウィーシン氏の動向を伝えている。3面では、タクシン元首相次女のペートンタン氏が首相候補の最有力とされているタイ貢献党ファミリーの主任アドバイザーにセーター氏が指名されたことを伝えている。一方、1面では、タイ団結国家建設党(UTN)のストラテジストとなり、首相続投を目指すプラユット首相は、セーター氏の主任アドバイザー指名について、「彼はどんなビジネスをしているのか?国(の運営)と、ビジネス(の運営)とは違う」などと述べ、自らのライバルにはならないとの認識を示したという。さらに、4日付の同紙(3面)は、セーター氏本人はタイ貢献党が5月7日とされる次期総選挙で勝利した場合、自らは首相ポスト以外には興味がないとの意向を表明したと伝えている。

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TJRI編集部

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