EVブームは「燃料切れ」に?

EVブームは「燃料切れ」に?

公開日 2022.08.30

14日付の英エコノミスト誌はビジネス面で、「電気自動車(EV)ブームは実現する前に燃料切れになってしまうのか?バッテリー不足からその可能性は高い」というタイトルの分析記事を掲載している。同記事はまず、「EV(ブーム)は止められないように見える」とした上で、世界自動車販売台数におけるEVのシェアは2021年の10%から2030年には40%になる可能性があるとのBloombergNEFの予想を紹介。さらにこうしたEV車の増加に伴いバッテリーの需要は増加し、BernsteinによるとEVによるバッテリー需要は2030年までに現在の6倍の2700ギガワット時になる見込みだという。こうした見通しの中で、バッテリー原料の増産、バリューチェーン拡充の動きが相次いでいると報告する。

しかし、こうした動きも地政学的な緊張の高まりとともに、世界のバッテリー産業をリードする中国への依存度が高い欧米の自動車メーカーなどにとっては十分なものではないと指摘。バッテリー原料となるニッケルやコバルトなどの金属価格が上昇し、10年以上ぶりにバッテリーコストが上昇する見込みだという。BloombergNEFは今年6月、EVの購入・利用コストは2024年までに内燃機関車と同じ水準まで低下するとの従来予想に懐疑的な見方を示した。既存のバッテリー大手である中国の比亜迪(BYD)や寧徳時代新能源科技(CATL)、韓国のLG、SKイノベーション、日本のパナソニックは2029年末までに1360GW時の生産能力増強を計画し、新規参入の必要もあるが、それは容易ではないと強調する。

そして欧米の自動車メーカーにとってはバッテリー生産における中国の独占が最大の課題だと指摘。中国のバッテリー生産能力は現在、世界の80%のシェアを占め、今後10年で低下が見込まれるものの、それでも70%を維持する見込みという。これに対し、米国のシェアは12%、残りの大半が欧州だという。このため、欧米自動車メーカーは現在、韓国企業との合弁などの形でバッテリー生産増強に取り組んでいるものの、中国依存は変わらないとする。

また、原料ではニッケルが世界生産量の37%を占めるインドネシアでの増産が期待されているものの、ハイグレードではなくバッテリー用としては非効率だという。またリチウムは、新開発計画で2026年までに供給余剰になる見込みだが、その大半は中国国内となり、かつオーストラリアや中南米産に比べ品質が低く、加工後のコスト高という課題を抱えているという。


アジア太平洋経済協力会議(APEC)は8月19日、バンコクで観光相会合を開催した。タイのピパット観光・スポーツ相は記者会見で、APEC観光戦略計画2020~2024に基づき、新型コロナウイルス流行後の観光回復を加速するための協力指針などを議論し、「Regenerative(再生可能)な観光」に関する政策提言で合意したことを明らかにした。しかし、すべての議題で合意することができず、議長声明の発表にとどまった。20日付バンコク・ポスト(ビジネス1面)によると、ある一つの参加国が「平和」と「安定」という文言に懸念を表明したという。


日本の総務省国際戦略局は8月19日、タイのデジタル経済振興庁との間で「破壊的イノベーション」分野で協力する覚書(MOU)を同月5日に調印したと発表した。両国はこれまでICT分野での破壊的イノベーションで相互交流し、総務省の「異能vationプログラム(ICT分野で、破壊的イノベーションの種となるような技術課題への挑戦を支援するプログラム)」ではタイからの応募が全体の20%を超えるなど連携の成果が上がっていると強調。大学、公的機関、企業、地域団体、メディアなどの関係者と連携していくなどとした。

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TJRI編集部

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