TJRI本格始動で、レセプション開催(詳細リポート)

TJRI本格始動で、レセプション開催(詳細リポート)

公開日 2022.10.04

日本とタイをビジネスでつなぐB2Bマッチングプラットフォーム「TJRI(タイ日投資リサーチ)」(運営会社:メディエーター、ガンタトーン・ワンナワス社長)は9月28日、在タイ日本国大使館と共催で日タイ修好135周年記念イベント「TJRI Business Networking Reception」を開催するとともに、TJRI会員サービスの開始を正式発表した。当日は会場となった在タイ日本大使公邸にタイ大手企業及び在タイ日系企業の経営陣108人が一堂に会し、タイと日本の垣根を越えた民間企業同士の大規模な交流会となった。

日タイの企業の経営陣108人が出席 = 9月28日、バンコク

蜜月関係は永遠なのか

レセプションではまず主催者の梨田和也駐タイ日本国特命大使が開会あいさつし、「タイには古くから多くの日本企業が進出し、今や約6000社がビジネス活動を行っている。タイは東南アジア最大の拠点であり、極めて重要なパートナーだ」と強調。

梨田和也駐タイ日本国特命大使 = 9月28日、バンコク

「一方で、私は両国の蜜月関係が永遠のものなのか、若干危機感を持っている。先人たちが活躍した時代とルールが変わってきている。そして何よりタイの企業が目覚ましい発展を遂げている。TJRIは以前からこのような問題意識を有し、日本企業に対して警鐘を鳴らしてきた。そのようなTJRIの考えに共鳴した」と報告した。その上で、「タイ企業と日本企業がお互いの強みを活かしながら、『共創』(co-creation)の精神で、共に成長していくことを目指して、一層強固な関係を構築していくことこそが、タイと日本の持続的な発展につながると確信している」と締めくくった。

一方、共催するメディエーターガンタトーン社長はこのレセプションの意義について、「本日参加いただいた日系企業の売上高を合算すると約1兆バーツでタイの国内総生産(GDP)の5.6%に相当する。タイ企業も含めると6兆バーツとなり、タイのGDPの38%に相当する企業がここに集まっている。また、本日参加した日本企業本社のグローバル売上高は125兆円で、日本のGDP550兆円の23%となり、タイのGDPの2倍だ。それだけの会社が今日集まっている」とアピール。

メディエーター、ガンタトーン社長 = 9月28日、バンコク

そして、「親しく食事をし、携帯に電話できるタイ企業が10社以上いる方はいるか。一方、タイ企業も日系企業をいっぱい知ることが必要だ。多くの日本企業がいるのに接点がない。今日は名刺交換をたくさんして、10人以上の経営者と知り合いになっていただき、来年には毎月1社、タイの経営者と食事をしていただくと、タイにも新たな展開が生まれるだろう」と今回のレセプション開催の狙いを語った。

タイと日本の民間セクターの協力・共創を強化

来賓として最初にスピーチしたのは東部経済回廊(EEC)事務局シハサック・プアンゲッゲオ特別顧問だ。同氏は「過去30年間、日本がイースタンシーボード工業団地に投資したことがタイの産業発展につながった。EECが今後、タイと日本のパートナーシップを引き継ぐものにもなる。EECはフェーズ2に入り、EEC事務局は法律面を整備し、施設、デジタル、イノベーション、人材などさまざまなインフラを用意した。タイと日本の民間企業の協力は『インダストリー4.0』と連動した新たなビジネスを創出できる」と述べた。

東部経済回廊(EEC)事務局のシハサック・プアンゲッゲオ特別顧問 = 9月28日、バンコク

さらに同氏は、「日本は現在、グリーン経済への移行期にあり、AJIF(アジア未来投資イニシアチブ)やAETI(アジア・エネルギー・トランジション・イニシアチブ)という政策を採用した。これらは、タイと日本の協力・共創を支えていくだろう」と強調。その上でTJRIが、このイベントに参加するタイと日本の民間セクターの協力・共創を強化する一助となることを心から願っていると訴えた。

続いてタイの製糖大手のミトポングループ・新規事業グループプラウィット・プラキッシー最高業務責任者(COO)が登壇。

ミトポングループ・新規事業グループのプラウィット・プラキッシー最高業務責任者(COO)= 9月28日、バンコク

「現在は11社の日本企業とコラボの会話をしている。今後のタイにとってはバイオ・循環型・グリーン(BCG)がとても重要で、実現するためには日本企業との協業が互いの良いチャンスになる。今後タイだけでは市場が狭く、東南アジアに出て行かないといけないが、日本企業と互いの強みを活かして一緒に出ていく。TJRIと1年前から一緒に仕事していて日本企業のパートナーも出会えて感謝している」とエールを送った後、乾杯の音頭を取った。

技術を持つ日本企業と協力

その後、レセプションは食事と参加者間の懇親の時間を挟んで、TJRIとのつながりの深い企業幹部によるスピーチが行われた。まずタイ企業側からサイアム・セメント・グループ(SCG)ユッタナ・ジアムトラガン副社長(経営管理担当)が「SCGは昨年、TJRIプロジェクトを通じてメディエーターの支援を受け、さまざまな分野でSCGが求めているテクノロジーのパートナー企業の候補を見つけることができた」と報告。具体的には関心分野やビジネスニーズを日本企業と共有する場である「オープンイノベーショントーク」に参加し、多くの日本企業と出会うきっかけをいただいたと述べた。

サイアム・セメント・グループ(SCG)のユッタナ・ジアムトラガン副社長(経営管理担当)= 9月28日、バンコク

さらに同氏は、TJRIにはタイ企業と日本企業間のコミュニケーションや調整ができる専門チームがあると指摘。また、「技術を持つ日本企業と情報を交換し、協力の機会を生み出すことも可能であり、これらはビジネスコネクションを構築するためのとても良いメカニズムだ」と評価した。その上で、「SCGは技術革新における日本との協力関係をさらに強化し、お客様のためにイノベーションを創出、両国の持続可能な社会・経済発展に役立てていきたい」と抱負を語った。

新規事業では市場を熟知したパートナーが必要

日本企業側からは三菱自動車タイランド小糸栄偉知社長兼最高経営責任者(CEO)が登壇。同氏はまず、「タイでの三菱自動車の事業は今年で61年目。1988年に当社がカナダに輸出をしたのが、タイからの自動車輸出の第1号だ。今でも約120か国に自動車を輸出している」と報告。そして、タイ政府は国際社会の潮流に合わせ、「バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデル」を表明しているが、このBCG政策に基づく施策の一つに「ASEANにおける電気自動車(EV)の生産拠点になる」ことが明示されていると述べた。

その上で、「当社はタイの現状の環境下において、生産から廃棄までのトータルCO2排出量が最も少ないと考えているPHEVをはじめ、エンジンの高効率化や、新世代ハイブリッドといった新たな電動パワートレーンの電動車の選択肢をお客様に提供することで、タイ政府の掲げるこのBCG政策に応えようと考えている」と説明した。

三菱自動車タイランドの小糸栄偉知社長兼最高経営責任者(CEO)= 9月28日、バンコク

また、例えば自動車のコネクテッドサービス、あるいは自動車が電源供給を担う機能をどう都市や生活に実装していけるかなどの新規ビジネスでは、欧米や日本などでの発祥モデルを輸入するのではなく、むしろタイが発信地になっても良いと指摘。こうした新しい領域にチャレンジするには、タイの市場を熟知したパートナーが必要不可欠だとの考えを示した。

最後に小糸氏は、TJRIについて「日本企業とタイ企業をつなぐ全く新しいBtoBマッチングプラットフォームとして、両国企業の課題解決、将来の発展に重要な役割を果たすものと確信している」と述べるとともに、TJRIの取り組みを通じて幾つものタイ企業と接点を持つことが出きたことに改めて感謝の意を表明した。

タイから撤退せず、投資継続に感謝

レセプションの最後に登壇したのはタイ投資委員会(BOI)ソンクリン・プロイミー副事務局長だ。同氏は日本関係の仕事を20年以上続けていると説明した後、今回のレセプションについて、「タイと日本の関係をつなぐ素晴らしいイベントだ。できれば、毎年か毎月開催できたら良いと思う」と称賛。

タイ投資委員会(BOI)のソンクリン・プロイミー副事務局長 = 9月28日、バンコク

日本はタイへの投資国としてはいつも1番だったが、今年上半期は1番ではなかったと報告。下半期に日本が1番を返り咲くのを願っているとエールを送るとともに、タイから撤退せず、投資を継続していることに感謝の念を伝えた。また現在、日本の企業は近隣諸国に投資を拡大している会社が多くなっているが、われわれはこれを残念に思っているわけではなく、タイでの投資が成功した証だと思っていると述べスピーチを締めくくった。

「タイ企業幹部と会う機会として貴重」

今回のレセプションに参加者に対するアンケート調査から幾つか日本企業幹部からの回答を紹介しておこう。この日の「イベントに対する感想」では、例えば「普段会えないタイ人経営者の方と知り合う機会があり、唯一無二のイベントだった」など、特にタイ企業幹部と会う機会として貴重だったとの声が最も多く、また「リアルでの接点は重要」との指摘もあった。

また、「普段会えない業界の方に会えたこと、われわれの事業をこれまでの客先以外の方にお知らせできたことなど非常に有意義だった」と他業界、これまでの顧客以外と話ができたことへの評価も聞かれた。一方で、「試みは良いが、各企業が具体的に何を欲しているのか、欲しているものを通じて何ができるのかが、不明確だった」と次回の改善を期待する声もあった。

また、「今後TJRIに期待するイベント・事業があればご教示ください」との質問には、「今回のイベントが継続していくこと」「今回のような交流の場に若手も参加できるような催し」「日系企業に勤めるタイ人(マネージャー級)に対する、タイ企業へのプレゼン能力向上」といったネットワーキングイベントや研修に対する要望が多かった。一方、「他のASEAN諸国と比較したタイの強みなどをデータで説明いただける機会があれば非常にありがたい」というニーズもあった。

TJRIの目的とその思い

主催したメディエーターガンタトーン社長は今回のレセプション開催にあたって、改めてその目的と思いを次のように語る。

タイ人から見て、日本企業は日本企業同士の取引を好む印象を強く持っている。一方で、「日本人経営者からはもっとタイ企業とつながりたい、一緒に何か協業できる機会がほしい」と良く相談を受けるが、タイ側があまりに大きい組織になると、面談を申し込むためには明確な趣旨と目的が必要になり、日本人経営者が気軽に声をかけられる状態になく、他の方法もないというケースもある。

3~4年で任期を終えて帰国してしまうような日本企業の人事制度、駐在制度を変えることは不可能だ。このような課題を、民間企業同士が持続的かつ仕組み的に解決するために、私たちはTJRIプロジェクトとこのイベントを企画した。TJRIはタイ企業のニーズを軸に発信することにより、日本企業が明確な趣旨と目的を提示できるようになり、タイ企業との協業のきっかけになると信じている。一方、タイは日本企業が今後も投資拡大や進出を継続してくれるかを気にしており、タイがASEANの他国と人口規模、平均年齢、最低賃金、新興市場の可能性という土俵だけで比較されることがなくなると考えている。この会がタイと日本にとって新たな「協創:Co-Creation」的な協力を生み出し、ともに持続発展可能なあるべき将来の姿を実現するためのきっかけとなれば幸いだ。

▼本レセプションのプレスリリースはこちら▼
https://tjri.org/

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TJRI編集部

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