カテゴリー 経済/ビジネス
公開日 2023.05.16
タイ英字紙バンコク・ポストを発行するバンコク・ポスト社は3月23日、タイの医療ツーリズムを推進し、健康ハブに発展させる方策を討議する「Thailand road to wellness hub 」会議をオンラインで開催した。タイは健康ハブ化を目指す国家計画(2017~2026年)を策定したが、人材不足などのさまざまな課題が浮かび上がっており、今回の会議では政府機関と民間企業がタイの可能性と課題をめぐり活発な議論が交わされた。
まず、タイ政府観光庁(TAT)のユタサック総裁は特別講演で、「タイはウェルネス(健康)と医療ツーリズム(観光)では低価格で質の高いサービス受けられ、他の国に比べ競争力は高い。また、今後のウェルネル市場には楽観的な見通しを持っている。健康目的のツーリストは新しいサービスや高度化を求めており、ウェルネスサービスと他の観光サービスを組み合わせたハイブリッド型の健康ツーリズムは増加傾向にある。TATは、旅行者にボランティアプログラムへの参加や、料理体験、精神的・文化的な活動などのさまざまなサービスを提供する」と報告した。
同総裁はまた、世界の医療ツーリズムにおける金額ベースでのシェアはアジア太平洋地域が最も大きく、35%を占め、このうちタイが9%、インドネシアが6%、マレーシアが5%だとするアライドマーケットリサーチのデータを紹介。さらに、同リサーチはタイの医療ツーリズム市場は2019年の91億ドルから2027年に244億ドルまで増加するとの予測している。
ユタサック総裁は「タイは医療ツーリズムは競争力があり、特に安い医療費では平均的なサービス価格が米国より約50~90%安く、高度な医療技術から自然療法まで幅広い医療サービスを提供できる。また、政府は1年間有効で90日以内の複数回入国が可能な医療観光ビザや、5年から20年の長期滞在が可能な『タイランドエリート』ビザも用意している。他には大麻由来の薬や、『タイリビエラ』と呼ぶ健康ツーリズムゾーン、タイのソフトパワーなども医療ツーリズムに取り込むことができ、他の国より魅力的だ」とアピールした。
続くパネルディスカッションではまず、チワー・インターナショナル・ヘルスリゾートのグリブ最高経営責任者(CEO)がウェルネス産業における労働力不足や教育、環境問題への対応などで、政府の政策支援が必要だとの認識を示した。同氏は「タイはスキルのある労働者が海外に流出するという高度人材流出問題に直面している。このため政府は、外国人医師や自然療法士などの免許取得の条件を緩和し、東南アジア諸国連合(ASEAN)の労働力の自由な移動を支援する必要がある」と提言した。
次に、トンブリ・ウェルビーイングのティモシー最高経営責任者(CEO)が登壇。「タイにはさまざまな強みがあるが、弱みは国際的な語学力を持つ医療やメンタルヘルスの専門家が不足していることだ。英語、中国語、日本語などの語学力を強化し、タイで不足している専門職に対する労働許可も与え、さまざまな分野の海外の医療従事者がタイで仕事ができるようにする必要がある。そうすれば、知識の交流も進み、タイの医療の発展を加速できる」と訴えた。
また、タイ保健省保険サービス支援局の国際健康担当幹部のサオワパ氏は「タイは伝統的医療サービス、精密医療、食品やハーブなどのウェルネス製品、学術サービスなど、幾つかの強みを持っている。これらを組み合わせて、タイの健康・医療サービスを向上させる必要がある。ウェルネスビジネスは政府の国家計画に支援されており、政府はこれらを結びつける医療ツーリズム回廊『タイ・ウェルネス・コリドー(TWC)』プロジェクトを立ち上げる」との方針を明らかにした。
TJRI編集部
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