カテゴリー 日系スタートアップ
公開日 2023.01.17
昨年11月16日に開催されたスタートアップイベント「ロック・タイランド#4」で、ピッチイベントに登壇した日本のスタートアップ企業紹介の第5回は、顧客や市場のニーズに合わせた最適な藻類バイオファウンダリー・プラットフォームを構築する「algal bio(アルガルバイオ)」だ。同社の木村周CEOのプレゼンテーションを紹介する。
突然ですが2022年7月28日が何の日だったかご存知でしょうか?この日は「Earth Overshoot Day」という日で、2022年に生産可能な地球上の再生可能な生物資源を人類が使い果たした日です。言葉を変えると、地球1.7個分の生物資源を『消費』することでわれわれの生活は成り立っています。われわれは『消費』型社会から『循環』型社会への転換を強い意志を持って進めなければなりません。当社はその解決策の一つが藻類だと強く信じています。
『さまざまな領域で新資源として可能性を持つ藻類』出所:Algal Bio Co.,Ltd.
藻類は約20億年前にこの地球上に酸素をもたらしたように、光合成を通じて二酸化炭素(CO2)を吸収します。また真水のみならず海水や下水・排水でも利用可能で、太陽光を光源として活用でき、健康・化粧品に代表される「レッドバイオ領域」、代替タンパクといった食品や飼料・農業資材などの「グリーンバイオ領域」、バイオプラスチック・バイオ燃料といった「ホワイトバイオ領域」などさまざまな用途へ応用可能なサステナブルな新資源です。
しかし藻類産業はいくつかのボトルネックから産業化が遅れてきました。
地球上に存在する藻類種は約30万種と、例えば野菜の約800種と比較して遥かに多様性があるにもかかわらず、産業利用される藻類種はそのわずか0.01%の30種にしかすぎません。またこれまでの藻類企業は、単一藻類種からプロダクトアウトで製品開発を進めるビジネスモデルがゆえに用途の広がりが限られていました。
一方、当社は多種多様な藻類の可能性を解き放つために、逆のアプローチでビジネスモデルを構築しています。マーケットインで顧客や市場のニーズを理解した上で、最適な藻類種を提案する藻類バイオファウンダリーというモデルです。
当社は2018年に東京大学発のClean Techベンチャー企業として創業しました。『藻類の(可能性を解き放つ)研究開発で、人々と地球の未来に貢献する』をミッションに、藻類の産業利用を進めるために当社が構築した世界的にも非常に稀有な藻類バイオファウンダリーです。それは藻類から新たな製品やソリューションを商業化するためにさまざまな産業でご活躍される企業にご活用頂けるワンストップ研究開発プラットフォームです。
なぜ当社が世界に先駆けてこの藻類バイオファウンダリーを構築できたのか。それは東京大学での20年以上にわたる研究成果である多種多様な藻類株ライブラリーとそのデータ、そして育種・培養製法に関わる特許、さらにそれを実証するためのパイロットプラントといったファシリティーを持っているからこそ、ワンストップソリューションを提供できるのです。
『algal bioが作り出すカラフルな藻類』出所:Algal Bio Co.,Ltd.
では具体的に当社の藻類バイオファウンダリーで何ができるのか。それを象徴するのがこちらの写真です。皆様、藻類と聞くと緑色をしているイメージが強いと思いますが、当社はカラフルな藻類をつくり出すことが可能です。つまり色をコントロールするように、藻類に産生させる成分もコントロールできるのです。
当社の藻類バイオファウンダリーでは2つのマネタイズモデルがあります。1つ目は、企業とのパートナーシップを通じて藻類由来の新製品やソリューションを共同開発するモデルです。2つ目は、自社で製品化を進める自社開発モデルです。
共同開発モデルでは食品メーカーやエネルギー企業などと藻類を活用した様々な製品・ソリューションの開発を進めています。例えば、関西電力(KEPCO)と石炭火力発電から排出されるCO2を藻類に吸収させて化粧品素材やバイオプラスチックを製造する技術開発を、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援も受けて鋭意進めています。
また自社開発モデルでは睡眠改善に資するサプリメントを今年からクリニックチャンネルで販売開始予定です。
このように藻類を活用してさまざまな社会課題を解決するための世界No.1の「クリーン・テック」企業を目指しています。われわれの取り組みは国内外メディアからも注目いただいています。
本日参加されているタイ企業の皆様ともぜひ藻類を活用した、よりサステナブルな製品やソリューション開発を通じて、グローバル規模の社会課題を解決するパートナーとなり、そして次世代に向けたソリューションになりたいと思っています。
TJRI編集部
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