バイオ燃料推進で、日系企業も貢献を ~三井住友銀行がインド自動車産業セミナーを開催~

バイオ燃料推進で、日系企業も貢献を ~三井住友銀行がインド自動車産業セミナーを開催~

公開日 2023.11.28

三井住友銀行(SMBC)は11月6日、「急拡大するインド自動車マーケット徹底分析~日系メーカーの切り口~」と題するオンラインセミナーを開催した。登壇したのは同行アジア・大洋州トレジャリーのエコノミストである阿部良太氏と、企業調査部シンガポールの平岩郷志部長代理で、アジア・大洋州営業第一部の井浦佑紀部長代理がモデレーターを務めた。

グローバル経済のエンジンとしてインドに期待

同セミナーではまず阿部氏がインド経済・市場の展望を報告。SMBCは2023年度のインドの実質GDP(国内総生産)は前年比6%増、2024年度は6.3%増と強い伸びを予測しているとした上で、今後も「6~7%のレンジの高い伸び率で拡大していくだろう」との見通しを示した。また、アジアの他の地域でもフィリピンやベトナムが高い成長率を続けてきたものの、インドは筆頭であり、特に「これだけ莫大な人口規模で、6~7%という成長を続けられる国はインドをおいてほかにはない」と強調。さらに、「中国の景気減速感が高まる中で、次の投資先、グローバル経済のエンジンとしてインドへの期待は膨らんでいる」と訴えた。

阿部氏はこのほか、モディ首相の人気が厚く、来年の総選挙でも与党が政権を維持する見通しであるなど政治が安定していると指摘。また為替レートでは、極端な米ドル高となる中で、2021年1月以後、円が対ドルで45%下落する一方、インド通貨ルピーは対ドルで15%しか下落していないなど他のアジア通貨に比べた為替相場の安定性を強調。「裏を返せば、マーケット参加者がインドに対して明るい将来を描いている」との認識を示した。

稼働率84%、生産能力増強がテーマ

阿部氏のインドの経済概況報告に続いて、平岩氏が「APAC自動車産業の将来像~LCA対応に向けた生産拠点戦略」と題して講演した。まず、インドの自動車生産・販売状況について、新型コロナウイルス流行前の実績を上回って過去最高になっており、「一言でいうと非常に活況だ」と強調。販売では基本的には内需が多く、一方、輸出は国内生産の15%にとどまっているとの市場の基本構造を説明した。そして今年の生産台数は600万台になる見込みとする一方、今年上半期の国内販売は前年同期比9%増で、一昨年の26%増に比べると伸びは鈍化しているものの、内需の伸びは今後も続くだろうとの見通しを示した。

また、販売の特徴ではアジア全体で起きているスポーツ用多目的車(SUV)人気が波及しており、かつてのハッチバックやセダンが中心だったインド市場でも2022年にはSUVが最大のセグメントになったと指摘。また、地域的には、マハラシュトラ州などトップ5州が全体の約50%を占め、都市部中心に給与水準の上昇を背景にSUVが売れていると報告した。まだ小型車やハッチバック車が中心の農村部でも今後SUVが広がっていく可能性があるとの見方を示した。

平岩氏はこのほか自動車工場の稼働率について、7割前後が適正水準の目安だが、「インドは現在84%に達し、工場が逼迫した状況だ」とし、生産能力の増強が今後トレンドになっていくだろうとの見通しを示した。また、インドは部品調達の2割強を中国市場に頼っているのが現状で、今後、国内投資を拡大し、付加価値を高めていくことも課題だと強調。一方、中国の完成車メーカーのインド進出をインド政府から安全保障上の理由から拒否された事例が多いとした上で、「中国メーカーにとってはインドでのビジネスは非常に難しい」との認識を示した。

LCA対応では「電動化」「バイオ燃料」「リサイクル」がキーワード

平岩氏はこうしたインド自動車産業の基本構造と最新動向を踏まえた上で、グローバルな自動車産業のトレンドと同様に、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」対応と二酸化炭素(CO2)を全体として減らしていくのが今後の課題だと強調。大気汚染が深刻であると同時に、非資源国であり、また原油を輸入に依存しているインドでは、そのソリューションとして、「電動化」「バイオ燃料」「リサイクル」の3点が今、ホットトピックになっていると報告した。

そして、インドのCO2排出量のセクター別比率では、自動車を含む運輸部門が15%を占めているため、CO2排出削減が電動化推進の一つの背景だが、産業育成、雇用創出といったインド経済の発展もEV推進の大きな要因になっていると指摘。そしてインド政府のEV化推進策では、2030年までに30%をEVにするという目標はあるが、生産目標はないと報告した。一方、インド政府によるEVへの購入補助金では現在、2輪車と商用車が対象になっており、特に2輪車のEV化は非常に進んできたが、個人向け乗用車には購入補助金はまだなく、政府のEV化政策では4輪車の優先順位が低いのが現状だと訴えた。このほか、インドでのEV普及の課題としては、電力不足や充電インフラの問題もあるとの認識を示した。

バイオ燃料はインドに非常にマッチ

平岩氏は、CO2排出削減の3つのソリューションの1つであるバイオ燃料については、新車だけでなく既に販売された自動車でもCO2排出削減の効果があると指摘。「インドという国としてもバイオ燃料は親和性が高い」理由の1つとして、原油の輸入依存度が98%と極めて高いことを挙げる。特にインドが経済発展を続ける中で、他国にエネルギーを大きく依存していることは安全保障上の問題があり、貿易赤字の問題もあるため、インド政府として輸入依存度を下げるためには「バイオ燃料の活用は非常にマッチしている」と訴えた。

さらにバイオ燃料がアジア太平洋地域、特にインドで注目されるもう1つの要因として、既存産業・雇用の維持・育成を挙げる。平岩氏は、インドの国内総生産(GDP)構成比で農業は18%を占め、さらに、労働人口比率では農業関連が43%を占めると指摘。インドでのバイオ燃料はサトウキビが主原料となっており、「バイオ燃料の普及は石油依存度を下げるだけでなく、人口の約半分の農民を支援し、国内経済を押し上げる効果もある」とした上で、バイオ燃料推進に補助金を出していくことは選挙対策にもなるのではとの見方も示した。

バイオ燃料普及目標を前倒し

平岩氏はバイオ燃料をめぐり、ブラジルの現状とも比較する。ブラジルでは、エタノール100%でもガソリン100%でも走行できるフレックス燃料車(FFV)が既に普及し、ガソリンスタンドでもどちらも入れられるようになっており、インフラではバイオ燃料専用のパイプラインも引かれていると紹介。ブラジルとインドはサトウキビ生産量の1位、2位の国であり、自国のエネルギー源として使えるという非常に似ている面があるとの認識を示した。

そしてインドで政府はエタノール混合目標を設定しているが、混合率20%を達成する(E20を標準燃料にする)目標年を当初の2030年から2025年と5年間前倒ししたと報告。政府や業界関係者に話を聞いたところ、2025年に「E20」実現の可能性は十分にあるとの感触を得たという。一方で、インドでのバイオ燃料普及の課題としては、エタノールの原料となるサトウキビの生産地域が限定されることを挙げ、全国に普及させるためにはブラジルのようにパイプラインを敷設するなど輸送方法の検討も必要だとした。

EV生産拠点化にはリサイクル活用、日系企業の貢献

自動車からのCO2排出削減のもう1つのソリューションである「リサイクル」について平岩氏は次のように解説する。インドは非資源国であるため、安全保障・資源確保の強化が必要だが、電動車部品、エンジンなどの部品、共通部品の原料の調達国を図表で整理すると、中国やロシアの比率が高いことが分かると指摘。「蛇口を絞められた時にはEVに限らず自動車自体が作れなくなる」というリスクがあるとし、そのヘッジのために、「一度入ってきた資源をいかに国内で回していくか」という意味でリサイクルの活用が重要だと訴えた。

そして、特に今後EVの生産台数が増えてくると、輸出の拡大も考えられ、「EVの生産拠点、輸出拠点にしていくためにはリサイクルの強化が重要だ」とする。特にカギを握るのがEVの巨大市場である欧州であり、欧州規制・基準への対応の可否がEV生産拠点化の選定要素の一つとなり、「リサイクルサプライチェーン」の構築が不可欠だと強調した。

平岩氏はまた、これからインドでバイオ燃料が増えていく中で、内燃機関(ICE)車に強みを持つ日系企業がどのような役割を果たせるかという問題提起に対し、インドは内需が非常に伸びる一方で、生産は高稼働の状況が続いているため、まずは日系メーカーも能力増強投資を含めて内需対応を急ぐ必要があると強調。一方で、「バイオ燃料をフックにしてアジア、特にタイからインド向けの輸出を強化していく」という戦略があるのではとの見方を示した。バイオ燃料に対応した自動車部品というハード面、またベストパフォーマンスを出す燃料噴射タイミングなどのソフト面で日系メーカーに優位性があると説明した。

TJRI編集部

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