タピオカ粉・食品大手タイ・ワーがパートナー募集 〜日本市場向けの食品開発、バイオプラスチック生産・販売事業など〜

タピオカ粉・食品大手タイ・ワーがパートナー募集 〜日本市場向けの食品開発、バイオプラスチック生産・販売事業など〜

公開日 2023.10.03

TJRI(タイ日投資リサーチ)では8月23日、タイ企業のニーズを日本企業向けに発信するオンライン説明会『Open Innovation Talk』の第18回として、75年以上の歴史を持つタピオカ原料のでんぷん(スターチ)生産大手で、はるさめ麺などのバーミセリ(vermicelli)ではタイ最大手メーカーであるタイ・ワー(Thai Wah Public Company Limited=TWPC)に登壇していただいた。同社のスターチ事業部のエカモン・クラーイガート部長、消費者向け食品事業部のパッチャリン・ワチラウォラカム部長、そしてバイオプラスチック事業部のタナチャート・ラオシリポン部長が、それぞれの担当事業部の概況などについて報告した。

スターチ生産は60年以上、食品などを40か国以上に輸出

Q. TWPCの歴史と事業概要は

エカモン氏:TWPCは1947年に創業し、「Create Innovation and Sustainability from Farm to Shelf」というビジョンを掲げ、タイの農業・食品業界で事業を展開している。でんぷん(スターチ)や食品などの全生産能力は年間50万トン以上で、生産量の80%を40カ国以上に輸出している。生産工場はタイやベトナムで15カ所に所有しており、中国とインドネシアに販売会社を持っている。今後は、インドとアメリカにも拠点を設置する計画だ。さらに、タイ証券取引所(SET)に上場し、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも優良企業と評価されている。

TWPCの事業概要
「TWPCの事業概要」出所:TWPC

また、顧客ニーズに応える商品を開発するため、商品の用途に着目するとともに、新しい販売ネットワークと新規顧客を開拓してきた。さらに、健康意識が高まっている世界トレンドに合わせた商品を開発した結果、この新型コロナウィルス流行期間中の3年間も毎年成長し、3年で30%以上伸びている。

現在TWPCは、でんぷん・加工でんぷん製品事業、食品事業、バイオプラスチック事業の3つが主要事業だ。

Q. でんぷん事業ではどのような商品を製造・開発しているか

エカモン氏:TWPCはでんぷんの製造と販売から始まった。当初はキャッサバを原料としてでんぷんを製造しており、現在は原料としてコメや緑豆(リョクトウ)なども使っている。でんぷんと加工でんぷんは「Rose Brand」というブランド名で60年以上販売しており、ベーカリー、ヌードル、スナック、ソース、食品−の5つが主要用途で、でんぷんから革新的なソリューションを開発し、B2Bの顧客に供給している。

でんぷんからのソリューション開発
「でんぷんからのソリューション開発」出所:TWPC

当社のソリューション開発は、

①Clean Label:消費者に分かりやすいシンプルな原材料配合で、化学合成された食品添加物を使わないキャッサバでんぷんやタピオカでんぷんなど

②Healthy Solutions:オーガニックでんぷんなどの健康意識の高い顧客向け商品

③Functional Solutions:加工でんぷんなどの機能性素材

−という3分野の商品を供給している。顧客の用途やニーズに合わせ、植物原料の食品添加物や食感改良剤などのでんぷん原料のソリューションを開発し、現在、50SKUs(ストック・キーピング・ユニット)以上の商品を保管している。

でんぷんからのソリューションの例
「でんぷんからのソリューションの例」出所:TWPC

タイの麺類メーカーのリーダーで、海外にも拡大を目指す

Q. 食品事業の具体的な商品は

パッチャリン氏:食品事業は主にB2C向けに展開しており、はるさめやライスヌードルなどのバーミセリ市場でのシェアは約34%と、タイ国内でトップだ。最初のブランドは「Double Drangons」だが、麺の太さや硬さ、口当たりなどの顧客ニーズに応えるよう商品開発した。別ブランドも展開しており、タイで最もバラエティ豊かなメーカーと言える。

TWPCの食品事業
「TWPCの食品事業」出所:TWPC

食品事業の商品は、以下の4つのカテゴリーに分けられている。

⑴ はるさめ(春雨)

太さや硬さ、食感ごとに分類し、シングルパックから業務用まで展開している。B2BよりB2Cのほうが市場シェアは高い。

⑵ ライスヌードル(米麺)

乾麺と生麺があり、太さや厚さなど地方によっても好みが違うため、7種類を展開している。OEM製品も製造できる。

⑶ タピオカでんぷん、サゴ(料理やデザートに使う米粒状のでんぷん)

食品事業でのタピオカでんぷんは主にB2C向けのサイズを対象としているが、B2B向けにも展開している。

⑷ インスタント食品

「ボートヌードル」や「トムヤムクン」など、タイ料理の本物の味を意識した商品を自社で開発しており、食品の中で一番伸びている。さらに、はるさめインスタントヌードルはコンビニ向けで市場シェア1位となり、カンボジアやラオス、ミャンマーにも販路を拡大している。

また、ナコンパトム県にある工場はISOやHACCP、ハラルなどの国際認証を受けているので、輸出も可能だ。さらに研究開発もTWPCの強みで、専門家スタッフが100種類以上の麺のレシピを開発しており、日本企業のニーズに合わせて作ることができ、日本市場向けのライスヌードルの開発も可能だ。

容器から農業用品まで使用可能なでんぷん由来のバイオプラスチック

Q. バイオプラスチック事業の内容は

タナチャート氏:バイオプラスチックはTWPCの新しい「Sカーブ」事業で、「ROSECO」というブランドで展開しており、今年で2年目だ。商品はバイオプラスチックを作るための原料調達と、原料から製品化した完成品の2つのカテゴリーがある。

現在、世界は脱炭素化とプラスチック廃棄物の削減を重視しているため、当社は、①使い捨て食品容器や工業用の食品包装などの商品開発 ②水中や土中で生分解可能な商品 ③化石由来原料の代替品としてバイオマスやリサイクルされた素材の使用 ④サトウキビやキャッサバなどの再生可能な原料を使用したエタノールやバイオポリマーの生産−などの分野で商品を開発している。

ROSECOのバイオプラスチックの原料(左)と用途(右)
「ROSECOのバイオプラスチックの原料(左)と用途(右)」出所:TWPC

バイオプラスチックを作るための原料には、以下の3種類ある。

⑴ Thermoplastic Starch(TPS)

でんぷんを原料とし、ポリマーに変性したもの。化石由来のプラスチックやバイオ原料に混ぜ、分解性を高める目的や「バイオコンテンツ」として使用できる。

⑵ Bio Compostable Compound/Bio Booster

バイオベースの「レジン」の状態で、分解能力が高いのが特徴。包装容器メーカーが成形に利用できる。

⑶ Bio-based Compound

レジンの状態。化石由来のポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)とバイオプラスチックを混ぜ合わせたもので、PPやPEの耐久性などの特性を維持している。

これらのプラスチック原料はさまざまな用途に利用できる。例えば、ラップやゴミ袋といったフィルム、容器やカップなどの熱成形と射出成形で製造した硬質包装材、紙ストローより硬くて熱に耐久性のあるストローなどだ。

Q. バイオプラスチックで作られた商品はどのようなものがあるか

タナチャート部長:ROSECOのバイオプラスチックの用途の具体的な例としては、当社が原料として調達しているキャッサバの畑でも利用している「農業用フィルム」だ。現在タイの農業には、除草剤の使用の弊害や除草作業を行う労働者の確保ができないなど、さまざまな問題がある。このフィルムを使用することで、除草剤の使用量を減らし、土壌中の湿度が維持できない問題も解決できるようになった。さらに、コストも低下し、収穫の歩留まりも高くなった。当社はこの農業用フィルムを販売しており、農地に敷くサービスも展開している。また、農家をサポートする専門チームも30人以上いる。共同開発に関心を持っている農業に強い日本企業のパートナーも探している。

バイオプラスチックで作られた「農業用フィルム」
「バイオプラスチックで作られた農業用フィルム」出所:TWPC

農家や従業員の生活を向上させ、事業を世界レベルへ

Q. 持続可能性に関する取り組みは

タナチャート氏:当社は「Create Innovation and Sustainability from Farm to Shelf」というビジョンを掲げ、

①Farmer:農家の生活を向上させ、安全で持続可能な農業を支援

②Factory:公害や有害物質の排出のないクリーンな工場を目指す

③Family:従業員や従業員の周りも雇用が生まれ、生活を安定させることが可能

④Food:健康を意識した商品を開発し、安全性やブランドに対する信頼性を強化

−という4つの面を重要視している。

Q. TWPCの今後の目標は

タナチャート氏:5年後の2027年の目標は3つあり、その一つは「Deepen global commercial capabilities」で、世界レベルでの事業拡大を目指している。それを実現するためには、パートナーが非常に大切だ。良いパートナーが見つかれば、インサイド情報が手に入ると同時に、コストの最適化ができ、新しい成長可能なプラットフォームも開発できると信じている。

日本市場向けの食品開発や、バイオプラスチック生産・販売におけるパートナー募集

Q. 各事業に対してどのようなパートナーを求めているか

⑴ タピオカ粉関連事業

消費者の健康、安全性、及び質の高い栄養の提供を目指している。特に、食品および食品添加物の製品開発において、化学物質の代わりにタピオカ粉を使用することで、食品産業における化学物質の使用の削減を行っていきたい。

⑵ 食品事業

タイ国内外の市場向けに、「はるさめ」や米粉の麺類を製造しているが、日本市場向けの製品の製造・販売はまだないため、日本市場向けに新たに麺製品を開発するパートナーを探している。日本において既に一般的に販売されている麺類だけでなく、特定の顧客グループのニーズに応えるような新製品を製造することも検討している。

⑶ バイオプラスチック事業

日本は政策として化石資源由来の原材料の使用削減、日本国内で使用するプラスチックにおけるバイオマス利用の割合を増やす方針を打ち出しており、日本市場向けのバイオプラスチック生産・販売の機会があると考えている。

TJRI編集部

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