有機とバイオブランドの世界リーダー目指す 〜ウボン・バイオ・エタノール~

有機とバイオブランドの世界リーダー目指す 〜ウボン・バイオ・エタノール~

公開日 2022.11.15

TJRI(タイ日投資リサーチ)では10月19日に、タイ企業のニーズを日本企業向けに発信するオンライン説明会『Open Innovation Talk』の第12回として、タイでキャッサバを原料とするエタノール生産大手のUbon Bio Ethanol(ウボン・バイオ・エタノール、UBE)のSureeyot Khowsurat(スリーヨット・コウスラット)社長を招き、同社の事業概要、経営戦略、日本企業との協業の可能性などについて語ってもらった。

中核事業のエタノールでは原料多様化を推進

Q. UBEグループの現在の事業概要は

ウボン・バイオ・エタノール(UBE)は2006年創業で、タイ東北部ウボンラチャタニにキャッサバ原料のエタノール工場としてはタイ最大の工場を持っている。企業のビジョンは「技術と持続可能な開発を通じて世界のオーガニックとバイオベースのリーディングブランド」を目指すことだ。

UBEグループはタイ証券取引所(SET)上場のエタノール事業会社UBEを中核に4つの会社で事業を展開している。UBE傘下にはキャッサバ・スターチ(でんぷん)事業などを行うウボン・サンフラワー(UBS)、コーヒー、コメ、肥料のオーガニック商材を生産・販売するウボン・バイオ・アグリカルチャー(UBA)、UBAが今年7月に買収した浮体式太陽光発電事業を行うウボン・セーン・アーティッド(USA)の3社がある。

Q. UBEの中核事業は何か

『UBEグループの3つの中核事業』出所:UBE

UBEグループの中核事業は3分野ある。その1つのエタノール製造では原料をキャッサバにこだわらず、糖蜜などの他の原料を利用可能としており、1日当たりの生産能力は40万リットルだ。2つのグレードのエタノールを生産しており、燃料用グレードは純度99.8%でガソリンに混ぜて、国内のガソリンスタンドで販売されている。主な顧客は国営タイ石油会社(PTT)など全国の燃料販売会社だ。一方、産業用グレードの純度は95.0%で、消毒用アルコールとして利用されている。

有機ビジネスを強化

Q. エタノール製造以外の事業の現状は

『UBEのStarch&Flour事業』出所:UBE

タピオカ(キャッサバ粉)を利用する「Starch&Flour」事業がある。タピオカ・スターチ(でんぷん)は日量2800トンのキャッサバを原料とし、生産能力は日量700トン。タピオカ粉の生産能力は日量100トンだ。タピオカ粉はキャッサバをすべて利用するため植物繊維が含まれるが、タピオカでんぷんは植物繊維を取り除いたものだ。オーガニック(有機)製品と非有機製品の2つのグレードを製造しており、有機タピオカでんぷんの生産量は世界トップクラスだ。タピオカでんぷんはインスタントヌードル、シロップなど甘味剤、お菓子や冷凍食品などにも使われるほか、食品以外でも接着剤や繊維、バイオプラスチックにも使うことができる。

また、タピオカ粉は当社の新製品で、小麦粉価格が値上がりした今年は、小麦粉の代替品として使われた。グルテンフリーであり、食品ごとの血糖値の上昇度合いを示す数値であるグリセミック指数(GI)が低いのが特長だ。

このほか、ウボン・バイオ・アグリカルチャー(UBA)では、産業界の需要に対応するとともに、農業の多様化、持続可能性を促進するために、高品質のオーガニック製品や農産物を開発・販売している。具体的には有機飼料、有機肥料、タピオカチップ、有機米、有機コーヒーなどだ。

重点戦略は発酵技術、高付加価値化、有機化

Q. エタノール事業の戦略は

キャッサバ以外にも糖蜜、コメ、粗糖などさまざまな種類の原料を利用できる多数の製造ラインを持っているため、価格が変動しても原料を切り替えることができ、競合他社との競争力を維持できる。そして、自分たちで酵母(Yeast)を作ることができるので、安価に安定供給できる。日本の発酵技術はすぐれていると思っており、酵母に関する技術を持っている企業との連携を望んでいる。

また、廃棄物ゼロを目指しており、エタノール生産から出る副産物を別の製品に転換して、付加価値を高めていく。例えば、バイオガスの生産工程で出た水を農業用水として再利用する。さらに、エタノールそのものを高付加価値製品にしていくことを考えており、今後、取り組んでいく。例えば、エタノールを原料とした化粧品やバイオプラスチック、バイオジェット燃料などの工業製品を含む商品展開を進めていく。

『エタノール事業の戦略の一つとして高付加価値製品の開発』出所:UBE

Q. タピオカのオーガニック化の見通しは

タピオカでんぷんとタピオカ粉の事業戦略では、オーガニック比率を現在の半分かから、3年以内に100%まで高めていくことを目指している。また、現在は少子高齢化社会のため、ペットを買う人が増えており、ペットフードもオーガニックにこだわる人も多くなっており、オーガニックの高級ペットフードもトレンドだ。

さらに、未来食品分野でのオープンイノベーションと研究開発(R&D)に取り組み、高付加価値製品を展開していきたい。また、化学肥料を一切使わないことを証明する「CLEAN LABEL」の製品を増やしていきたい。

Q. オーガニック農業ビジネスの目標は

農家、顧客、サプライヤーと関係を強化し、ビジネス・パートナーシップを構築する。また、川上、川下の事業展開、合弁事業や企業の合併・買収(M&A)による事業拡大も目指している。具体的には、年内にも有機コーヒー、有機米の販売開始を予定している。

健康食品、バイオ技術、生分解性などの分野でパートナー求める

どんな事業で日本企業の協力を求めているか

ウボン・バイオ・エタノールは、①エタノールの生産能力は日量40万リットルと国内第4位で、エタノール事業では安定した収入がある ②原料調達で競合社が少ないなどの戦略的立地と、強力な農家ネットワークによる安定供給 ③持続可能なモデルによるプランテーションの奨励 ④単収の向上、幅広い製品ライン-など4つの競争上の強みを持っている。

こうした強みを生かし、UBEグループは、バイオベースの技術や市場に関する以下のような4つの分野・ニーズで戦略的パートナーを求めている。
(1)ベーカリー用有機キャッサバスターチ原料の食品生産・開発のパートナー
(2)機能性食材(食品・サプリメント用)の最先端バイオ技術・素材技術パートナー
(3)生分解性パッケージの製造に投資または共同研究・生産開発出来るパートナー
(4)サステナブルな航空燃料に投資または共同研究開発出来るパートナー

  • Facebook share
  • Twitter(X) share
  • Line share

TJRI編集部

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP