[Feature] エタノール産業の発展に向け規制緩和を 〜ウボン・バイオ社長インタビュー~

[Feature] エタノール産業の発展に向け規制緩和を 〜ウボン・バイオ社長インタビュー~

2023.01.24 Feature

欧州や中国主導での電気自動車(EV)シフトの勢いが加速する一方で、トヨタ自動車の全方位戦略にも改めて注目が集まっている。特に大型トラックや、航空機などでは将来的にも内燃機関が残るとの見方も広がる中で、その燃料として合成燃料やバイオ燃料に再び注目が集まっている。昨年10月にTJRIのオープン・イノベーション・トークに登壇いただいたウボン・バイオ・エタノール(UBE)のスリーヨット・コウスラット社長に改めてタイのバイオエタノール市場の概要や今後の見通しなどについてインタビューした。
(聞き手:mediator ガンタトーンCEOとTJRI編集部)

 

エネルギー基本計画でエタノール生産拡大へ

Q. タイのバイオ燃料の歴史と現在の状況は。

スリーヨット氏:タイでのバイオエタノールの使用は2001年に始まった。最初はエネルギー危機への懸念から、ラマ9世が導入した。ガソリンに混合して利用され、補助金が支給されることで、ガソリンより3~4バーツ安かった。現在、タイ全国のエタノール消費量は1日当たり400万~410万リットルだ。また、エタノールの原料別の生産量シェアは、その年の天候や収穫量に左右されるが、おおむねサトウキビが60%で、キャッサバが40%だ。

『エタノール(モラセス由来)生産事業者ランキング』出所:タイ・エネルギー省のデータからTJRI作成

『エタノール(キャッサバ由来)生産事業者ランキング』出所:タイ・エネルギー省のデータからTJRI作成

 

Q. これまでのタイ政府の方針と政策は。

スリーヨット氏:タイ政府のバイオエタノール推進政策にはまず、農産物価格を下支えるという狙いがある。さらにオクタン価向上剤としてガソリンに添加されていたメチル・ターシャリー・ブチル・エーテル(MTBE)が環境や健康上の問題があるため、削減する必要があり、バイオエタノールはその代替として奨励された。

現在、タイ政府は「Alternative energy development plan(AEDP)2018-2037年」というエネルギーの基本計画の中で、2037年までに、タイ全国のバイオエタノール消費量を1日当たり750万リットルに拡大することを目指している。この目標を達成するため、タイ政府は全国のガソリンスタンドで提供するベースのガソリンを従来のE10 (エタノール10%混合)からE20に切り替えていく方針だ。具体的にはオクタン価91のE10(ガソホール91)を廃止、オクタン価95のE10(ガソホール95)とE20(エタノール20%混合)だけ残す計画だ。さらに政府はエタノールを85%混合した「E85」を廃止する方針を打ち出しているが、エタノール業界は、E85もオプションとして残すよう求めている。

 

エタノール産業の発展に向け酒税法改正を

Q. スリーヨット氏はタピオカ・エタノール協会の会長を務めているが、同協会の役割は。

スリーヨット氏:エタノールは農産物の価格を支えるだけでなく、タイに大きな利益をもたらすクリーンエネルギーだ。タピオカ・エタノール協会としてはエタノールの使用量をもっと拡大していきたい。タイ政府は電気自動車(EV)の普及を支援しているが、エタノールはそれ以上のメリットがある。現在、タピオカ・エタノール協会はバイオ燃料のほか、持続可能な航空燃料(SAF)や、ハーブ、医薬品、化粧品などの産業用グレードでのバイオエタノールの利用を推進している。しかし、エタノールはアルコールとみなされ、酒税法の適用を受けるため、産業用グレードは販売できず、輸出も困難になっている。また、タイではさまざまなハーブ製品があるが、ハーブエキスを抽出する過程で溶媒として利用されるエタノールも海外から輸入しなければならない。このため、協会はこの法律改正を働き掛けており、もし実現すれば、エタノール産業はさらに発展するだろう。

『タイのエタノールの年間生産量の推移』出所:タイ・エネルギー省のデータからTJRI作成

 

原料豊富なタイは日本との連携可能

Q. タイのキャッサバ生産能力と輸出の可能性は。

スリーヨット氏:現在、タイでは年間約3000万トンのキャッサバが生産されているが、エタノール産業で使用されているのはそのうちの5〜6%に過ぎない。このため、必要な原料は十分にある。また、キャッサバのほとんどが飼料とエネルギー生産に使われているため、将来的にも人間の食料危機につながる懸念はない。日本がバイオエタノールに関心があるなら、タイには輸出余力はある。

 

Q. UBEの事業多角化と日本企業との連携の可能性は。

スリーヨット氏:UBEはエタノールの価値を高めるため、医薬品や化粧品を含めた産業用エタノール事業会社に移行していく。また、バイオプラスチックの原料用のエタノールも研究している。タイはエタノールの原料が豊富なので、日本企業が興味を持てば、連携なども可能だ。

 

有機農業、そして太陽光発電

Q. 有機農業を重視している理由は。

スリーヨット氏:世界的に健康食のトレンドが高まっている。このため、UBEは有機農業を非常に重視している。例えば、有機のキャッサバ、コメ、コーヒーだ。また、タイにおける有機農業を強化するため、政府や農家と連携している、例えば「Ubon Model Plus」は潜在力のある農家を選んでトレーニングを受けてもらい、その成果を確認し、良い農産物を生産できる農家を育てるプロジェクトだ。その成果は、他の農家にも有機農産物の栽培指針として示せる。

 

Q. 浮体式太陽光発電事業の目的は。

スリーヨット氏:ロシア・ウクライナ戦争により、電力価格が非常に高騰している。UBEグループは、(貯水池などにソーラーパネルを設置する)浮体式太陽光発電に投資しており、工場で使う電気はすべて自給自足可能にする計画だ。ソーラーパネルの価格は現在かなり下がっており、投資する価値がある。

 

規制緩和で、さらに発展へ

Q.バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデルをどう考えているか。

スリーヨット氏:タイは水や土壌などが農業に適している。政府がBCGモデルを推進することで、より多くの研究開発や事業開発が行われるだろう。そうなれば、これまで長く発展から取り残された川上産業である農業にも良い影響を与え、多くの利益がもたらされるだろう。さらに、バイオ化学産業ではバイオプラスチックに大きな需要があり、市場が成長する可能性は高い。しかし、タイは古い法律や規制が残っているため、このバイオ化学産業を展開していこうという企業はまだ少ない。もし法律が緩和されれば、この分野も大きく発展するだろう。

 

Q. 本拠地の東北部ウボンラチャタニの将来は。

スリーヨット氏:ウボンラチャタニ県はラオス、カンボジアに隣接している。また、ベトナムのダナンへもラオスを経由して2時間以内で行くことができる。ウボンラチャタニでは工業団地も完成し、製造業の拠点として発展する可能性があると信じている。

 

現在ウボン・バイオ・エタノール(UBE)では以下のような分野で戦略的パートナーを求めています。

01. ベーカリー用有機キャッサバスターチ原料の食品生産・開発のパートナー
02. 機能性食材(食品・サプリメント用)の最先端バイオ技術・素材技術パートナー
03. 生分解性パッケージの製造に投資または共同研究・生産開発出来るパートナー
04. サステナブルな航空燃料に投資または共同研究開発出来るパートナー

同社との協業に興味がある方は、TJRI運営事務局までお問い合わせください。
|お問合せ先
TJRI運営事務局
Email: info@tjri.org

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