宇宙スタートアップ紹介#4 『avatarin』宇宙にも意識の瞬間移動可能に ~ JAXAウェビナーより~

宇宙スタートアップ紹介#4 『avatarin』宇宙にも意識の瞬間移動可能に ~ JAXAウェビナーより~

公開日 2022.08.02

宇宙航空研究開発機構(JAXA)とタイ地理情報宇宙技術開発機関(GISTDA)が6月28日に開催した「日タイ宇宙ビジネスウェビナー・マッチングイベント」に参加した宇宙スタートアップ紹介の第4回は、遠隔操作ロボットを通じて人の意識や存在感を伝送、宇宙を含めた行きたい場所への瞬間移動サービスというユニークな事業を展開するavatarin(アバターイン)だ。

avatarin株式会社 代表取締役CEO 深堀 昂氏

自由にあらゆる制限を超えて移動できるサービス

ANAホールディングスの総合職として入社した時に、航空会社のユーザー数は世界人口に対してたった6%でしかないということを知って驚きました。実際、限られた人のための移動手段が発達していて、世界の約80億人の人々が自由に移動できるモビリティはまだないことに気づきました。

新型コロナウイルス流行で、最近でこそ少し回復してきましたが、国際線はほとんど運航できない時期が続きました。ただ、より長期間でみても、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、震災、台風などいろいろな災害でピタッと移動手段が止まることを繰り返してきました。

さらに高齢になると、家から移動できない日も来る。このため、身体と意識を切り離して、意識だけをさまざまな場所に伝送させるような移動サービスができないかと思ったことがアバター事業を始めることになったきっかけです。6%だけでなく100%の人々が自由にあらゆる制限を超えて移動できるサービスをつくろうと思いました。

『移動を制約するさまざまな問題』出所:avatarin株式会社

われわれの会社には世界中からトップエンジニアが集まっていますが、例えばシリア出身のエンジニアだと、シリア出身ということだけで入国できない国があり、移動はまだまだ民主化されていません。誰もがどんな時も、どんなところで生まれたとしても、自由に移動できる未来をつくりたいと思っています。ちなみにまだタイのエンジニアはいないので、是非ご応募いただけたら嬉しいと思っています。

身体の移動と意識の移動の組み合わせ

宇宙系で有名なXPRIZE財団が2016年にロサンゼルスで開催した「XPRIZE VISIONERS2016」というコンペに参加して、グランプリを取ったのが意識だけをいろいろなところに伝送するというアイディアです。この時はヒューマノイド型ロボットで挑もうと思っていましたが、人の形じゃなくても、いろいろな形で新しい身体に意識を伝送する方が良いのではないかと考え、いろいろな取り組みを始めました。このグランプリから企画、主催した「ANA AVATAR XPRIZE」という高性能のアバターロボットを開発するレース(2022年決勝)では、81カ国820チームのロボティクスのスタートアップのトップ企業や研究機関の方々が参加しています。

2020年3月にANAホールディングスを退職して4月にアバターインを立ち上げました。ANAとしては初のスタートアップ企業です。最初にスタートしたサービスはパソコンからアクセスできるようなシンプルなアバターロボットですが、好きな場所に置いて好きな場所に移動できるようなインフラ構築を日本から始めています。実際に、過去にタイの方が日本に瞬間移動して来られたこともあります。

『avatarinが開発したシンプルなアバターロボット』出所:avatarin株式会社

この移動手段は、リアルの移動を置き換えるということではありません。ルーブル美術館に実際に行けるときは家族で飛行機に乗って行きますが、毎日行きたくても実際には行けません。ただルーブル美術館のモナ・リザの横のダビンチの絵を毎日見たり、エリアマネージャーが50店舗の陳列状況を見たりするのは、「アバター」という新しい乗り物でやります。

このようなサステナブルな組み合わせが大事だと思っています。既存のインフラで身体を移動させる移動システムと、意識だけを移動させるシステムの組み合わせが人類の持続可能なモビリティをつくるために必須なのではないかと考えています。

キーワードは「Sustainable」「Inclusive」「Instant」の3つです。どこでも瞬間移動できるというモビリティプラットフォームを作っています。例えば「沖縄美ら海水族館」で、閉館後に移動して入館できるサービスも展開しています。普通なら人が来られないから閉館するというのが当たり前だと思いますが、アバターであれば時差の壁も超えますので、昼間の時間帯の国から夜中の沖縄に入るということもできると思います。新型コロナ流行期には、病院に提供したりしましたが、それ以外にも多くの場所で展開をしています。

『意識だけを移動させるアバターの活用例』出所:avatarin株式会社

ショッピング機能も開発しているので、近い将来、タイの皆様が日本のデパートで買い物をし、またその逆などいろいろなことができると思います。

宇宙ステーションにアバターイン

宇宙の取り組みでは、2020年11月には宇宙ステーションに設置されたspace avatarの地上からの操作を実行しました。これは宇宙航空研究開発機構(JAXA)とJAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)と共同で立ち上げた「AvatarX」という取り組みです。2020年5月にJAXAの協力を得て、「こうのとり」で打ち上げた宇宙用のspace avatarを、実際に400人の子供たちや家族連れの方にアバターインしていただき、世界で初めて一般の方が国際宇宙ステーション(ISS)に設置されたアバターを動かすという体験をしてもらいました。

内閣府の「Moonshot型研究開発制度」でも、スキルシェアリングと、プラットフォームを担当しています。これは4人のエンジニアが1つのアバターに入って上の手と下の手を別々の方が動かして操作する、融合するという技術を開発しています。

『Moonshotプログラムで4人のエンジニアが1つのアバターに入って操作』出所:avatarin株式会社

われわれは人工知能(AI)の「模倣学習」という分野を研究しているのですが、実際に使っているアバターのハンドは、触覚のフィードバックもついていて、これを使って人間の技の模倣学習を目指しています。

JAXAと内閣府のオープンイノベーション大賞グランプリで総理大臣賞をいただいたほか、宇宙開発利用大賞やバンダイナムコのガンダムオープンイノベーションパートナー賞をいただいております。地上・宇宙空間含めた新しい移動手段、新しい意識の移動手段に興味がある方は是非お問合せいただけたらと思います。

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TJRI編集部

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