JNTOが日タイ観光セミナー開催 ~ 岸田首相が飛び入り参加

JNTOが日タイ観光セミナー開催 ~ 岸田首相が飛び入り参加

公開日 2022.11.29

日本政府観光局(JNTO)は19日、バンコク市内のホテルで、日タイ間の相互往来の復活に向けて、タイの旅行業者に対し日本の最新観光情報を提供するセミナーを開催した。今回のセミナーはコロナ禍を経て「新たな冒険に出よう!新たな宝物を探そう!」がテーマで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)出席のためタイを訪問中の岸田文雄首相も飛び入り参加、会場は大いに盛り上がった。

ソフトパワー促進で協力、世界をリード

セミナーの開会ではまずJNTOの清野智理事長があいさつに立ち、「タイではいち早く昨年11月から外国人観光客の受入れを再開し、日本も今年10月から個人観光客によるビザなし観光が再開された。両国政府がお互い連携し、また競い合いながら、コロナ前には312万人を数えた日タイ間の相互往来の速やかな回復に向け取り組んでいきたい」と抱負を述べた。

JNTOの清野智理事長 = 11月19日、バンコク

続いて、来賓として登壇したタイのピパット観光・スポーツ相は「観光・スポーツ省もバイオ・循環型・グリーン(BCG)モデルを政策として掲げている。タイの持つさまざまなソフトパワーを活かすことで経済的な付加価値を創出し、タイのイメージ向上を図る。観光業界ではよりクリエーティブな観光の実現を目指し、食文化(Food)、映画やドラマなど(Film)、ファブリックやデザインなどのファッション(Fashion)、国技のムエタイ(Fighting)、そして一年中楽しめるお祭りやイベント(Festival)という『5つのF』に焦点を合わせ、外国人観光客に魅力を発信していく」とアピール。さらに「ソフトパワーこそが、日本とタイが世界をリードしていけるものであり、日タイ間のソフトパワー促進における協力がこれからの親交に大いに貢献するだろう」と強調した。

岸田首相がトップセールス

その後、セミナーは訪日プレゼンテーションに移り、まず北海道観光振興機構の中村智専務理事が「Hokkaido Love」をテーマに、北海道の雄大な風景を動画とスライドなどで紹介。そこに、当初予定にはなかった岸田首相が登場。「ようやくウィズコロナに向けた新たな段階に移行するときを迎え、わが国では、観光再始動プロジェクト~Open the Treasure of Japan!~を始めた」と説明した。そして世界遺産の姫路城では通常は見ることのできないエリアの特別公開があることや、来年2月4日からは北海道の「さっぽろ雪まつり」が3年ぶりにリアル開催されることを報告。さらに、「来月からバンコク~関西、バンコク~北海道間の直行便が復活するほか、日-タイ間の直行便総数も水際緩和の開始前と比べて3倍まで増える予定だ」と述べるなど日本旅行を呼びかけるトップセールスを行った。

岸田首相 = 11月19日、バンコク

岸田首相の飛び入り参加後、訪日プレゼンテーションが再開。姫路市の清本秀泰市長が「『和』の美と世界遺産『姫路城』」をテーマに、福井県敦賀市の高級昆布専門店「奥井海生堂」の奥井隆社長が「日本の食文化を世界に発信」という題でそれぞれスピーチを行った。さらに日本旅行業界(JATA)の志村格理事長が登壇し、「日本からタイへの観光市場概況」について報告した。

課題は人材や空港陸上支援などの資材不足

志村理事長はまず、日本人の海外旅行のトレンドについて、国連世界観光機関(UNWTO)のデータとして「日本は2011年から2019年の9年間に、合計2億2600万人の旅行者を海外に送った。そのうち、8000万人が東アジア、4000万人が東南アジア、4700万人が欧州、3500万人が北米に行っており、北から南へかけてのアジアの東部が日本人観光客・ビジネス客の主要な目的地だ。インバウンドについても80%以上が東アジアからのお客だ」と概観。さらに、「2019年のアウトバウンド旅行者数は2000万人、インバウンド旅行者数は3000万人を超え、観光産業は空前の隆盛を見せた。タイは、格安航空会社(LCC)航空網の充実もあり、180万人の日本人がタイを訪れる一方、130万人のタイ人旅行者を迎えるというバランスの取れたマーケットだった」と説明した。

しかし、コロナがこうした状況を一変させたとし、「コロナ禍が長期化したことで、観光産業への打撃は深刻となり、550兆円の国内総生産(GDP)のうち18兆円の旅行消費が消失。その結果、旅行業は売上高の80%を失い、数万人のスタッフが辞職、転職ないし、他の業種に出向せざるをえなくなった」と報告。その後、コロナの収束とともに、日本でも水際規制が段階的に緩和されてきたものの、「残された課題は、陰性証明を不要とする代わりに引き続き3回のワクチン接種を要求していることと、10空港しか国際線に開放されていないこと、需要が急回復してきたことによる人材や空港地上支援業務などの資材不足だ」との認識を示した。

観光交流は持続可能で高付加価値化を

このほか志村理事長は、タイ政府観光庁(TAT)の調査結果として、「日本人がタイ旅行に求めるものは、まずは食事、次いで歴史探訪、自然となっており、欧米の観光客に比べて自然やビーチの比重が小さいことが特徴だ」と説明。また、円安によって海外旅行が減るかとの質問に対しては「海外に行きたいという人々の欲求は強く、航空路線網が戻ってくれば、運賃も落ち着いてくるだろう」との見通しを示した。その上で、日タイ観光交流の将来については、持続可能な形で発展させていくことと、高付加価値化を進めていく必要があると訴えた。

左から佐野ひろ氏、東北観光推進機構の紺野純一理事長、九州観光機構の里浦徹専務理事 = 11月19日、バンコク

その後セミナーは、俳優の佐野ひろ氏をモデレーターとしたトークショーが行われ、東北観光推進機構の紺野純一理事長が「さあ、豊かさの最前線へ」の題で、また、九州観光機構の里浦徹専務理事が「無限の多様性の島、九州」との題で、それぞれ東北、九州の観光資源を紹介。タイのテレビで日本を紹介する旅行番組『すごいジャパン』を制作し、自らレポーターとしても出演している佐野ひろ氏が自らの旅行経験をもとに両地域の魅力をアピールした。

TJRI編集部

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