[Column] バイオ燃料で日タイ連携の可能性急浮上

[Column] バイオ燃料で日タイ連携の可能性急浮上

2023.01.24 Column

先週、東京発で2つのエタノールなどのバイオ燃料に関するセミナーが開催された。1つはアジア太平洋地域にフォーカスした戦略アドバイザリー会社、バウワーグループアジア(BGA)が18日にハイブリッド型で開催したシンポジウム「G7広島サミットへ、バイオマスの役割」で、自民党の甘利明衆議院議員(前幹事長)が基調講演をした。もう1つは、米国のトウモロコシ業界団体、アメリカ穀物協会が参加して開催されたウェビナー、「Green Mobility:is EV the only way?」だ。

この2つのセミナーに共通するのは、欧州が自動車の完全電動化に突き進む一方、トヨタ自動車が水素、バイオ燃料も含めた全方位戦略を主張する中で、日本としてどう対応すべきかを明確に提言している点だ。前者は大物政治家が農業対策としてのバイオ燃料の意義を強調。一方、後者ではバイオエタノールの最大の生産国である米国が日本向け輸出拡大を狙っていることが伺える。そして、実は両セミナーでは、タイなど東南アジアが米国のライバルとして浮上する可能性も示唆されている。

 

耕作放棄地でのバイオエタノール原料生産を

「内燃機関エンジンは電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)に比べて悪者にされる。しかし、トヨタ自動車の(豊田章男)社長も言うように、内燃機関が悪いのではない。燃料が地球温暖化を加速するなら、燃料を変えれば内燃機関はEVより環境に良いはずだ。EVの電気はまだ化石燃料で作っている部分があるからだ」

1月18日に開催された「G7広島サミットへ:バイオマスの役割」と題するシンポジウムで、こう強調したのは甘利明・自民党前幹事長だ。甘利氏は昨年10月に発足した国産のバイオ燃料や合成燃料の活用推進を目指す自民党有志の議員連盟「国産のバイオ燃料や合成燃料の活用推進を目指す自民党有志の議員連盟(バイオ燃料・合成燃料議員連盟)」の会長を務めている。同議連には岸田文雄首相と菅義偉前首相が最高顧問に就任している。

甘利氏は同議連の狙いについて、「日本はまだE1(ガソリンへのエタノール混合量が1%)の段階で、できるだけ早くE3にし、将来はE10だ。議連では国産の余地をかなり入れ込んでいる。それは農業対策にもなるからだ。耕作放棄地が非常に増えていって、そこがソーラーパネルだらけになると新たな問題も生じてくる。耕作放棄地にバイオ燃料用作物を植えて有効利用し、農業とバイオ燃料がつながっていくようにするという意味もある」と説明。さらに「アメリカからは日本の(エタノール)輸入量を増やしてくれと相当強く言われているが、国産バイオ燃料についても生産の道を開いていく挑戦をしていく」と訴えた。

甘利氏はまた、運輸部門すべてでEV化が可能になるわけではないと指摘。その理由について、航空機やトラックなどではEV化が難しいことに加え、「新車を環境対応車に変えていくことは大事だが、同時に圧倒的な量の中古車をカーボンニュートラルにしていくことがもっと大事だ。だから私はバイオ燃料や合成燃料が大事だと訴えている」と主張した。さらに「アメリカ以外からも東南アジア諸国連合(ASEAN)の国からも生産拠点にできないかと相談がたくさん来ている」ことを明らかにした。

この日のシンポジウムでは経済産業省、環境省の担当官のほか、日本自動車工業会の燃料・潤滑油部会の会長(トヨタ自動車)、全日本空輸経営戦略室の幹部によるレクチャーも行われた。このうち自工会からは、バイオ燃料や合成燃料などのカーボンニュートラル燃料(CNF)の必要性、その種類と使用・開発状況の報告があり、中でもバイオエタノールの世界の動向の見取り図が興味深かった。

『バイオ燃料(エタノール)の世界の動向』出所:一般社団法人日本自動車工業会

 

アジア・バイオマス・コミュニティー

一方、翌19日に日本のエネルギー・電気業界に関連する情報発信、イベント開催を行うプラットフォーム「JAPAN NRG」が開催したウェビナーは「Green Mobility:is EV the only way?」というタイトルだ。登壇したのは米国産トウモロコシやバイオエタノールなどの利用促進団体であるアメリカ穀物協会(US Grain Council)の日本担当ディレクターの浜本哲郎氏と、元三菱商事で2000年ごろからバイオマスエネルギー事業に関わり、2016年に日本環境エネルギー開発会社(NEED)を起業した澤一誠氏だ。

浜本氏はまず、輸送燃料におけるカーボンニュートラル達成の方法にはEVのほかにも合成燃料、燃料電池もあるが、その実用化はかなり先であり、バイオ燃料(第1世代⇒セルロース系など第2世代)の利用が有効だと指摘。一方で第1世代であるトウモロコシを原料とするバイオエタノールの生産動向について、農業の技術革新により、単位当たり収量が着実に増加し、生産量も増加し続ける中で、バイオエタノール向け需要は世界の全トウモロコシ需要の10%にとどまっていることなどをデータで紹介した。

一方、長年、日本でのバイオ燃料の普及に取り組んできた澤氏は、日本のバイオエタノール利用の現状について、現時点では米国など海外で一般的なガソリンにバイオエタノールを直接混合(10%混合ならE10)する方式ではなく、「ガソリンのオクタン価向上剤であるエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)の基剤として少量導入されているだけであり、その比率はわずか、1.7%(E1.7)と世界的にも極めて低い水準だ」と報告。その上で、E10を導入するにあたっての課題と対応策、E10を導入した場合のCO2削減量の試算、国産バイオエタノールの可能性になどついて説明した。そして、「官民連携の下、東南アジアにおいて開発輸入型と地産地消型バイオ燃料・合成燃料製造事業を現地との合弁で展開する」ために提唱している“アジア・バイオマス・コミュニティー”という興味深い構想を披露した。

 

大麻草からバイオエタノールを

今号のFeatureでインタビューを掲載したウボン・バイオ・エタノール(UBE)のスリーヨット社長は、「日本がバイオエタノールに関心があるなら、タイには輸出余力はある」などと述べ、キャッサバなどを原料とするバイオエタノールの日本向け輸出での日タイ連携を呼び掛けている。一方、東京都中小企業振興公社(東京SME)のタイ事務所などが昨年11月に開催したセミナーで講演した東洋ビジネスエージェンシーの梅木英徹代表は現在、ヘンプ(大麻草)を原料とするバイオエタノールの研究開発、実用化に取り組もうとしている。そこでは将来的な日本向け輸出も視野に入れている。

実は、米フォード・モーターの創業者ヘンリー・フォード氏はボディーを大麻樹脂とするヘンプカーを開発するとともに、燃料もヘンプを原料とするエタノールを使ったことがあるという。しかし、1937年に大麻税法が成立するなど米国では徐々に大麻規制が強化され、禁止されるに至った。一方、石油の普及が進む中で、各種工業製品では石油が主要原料となり、特に中東での大規模油田の発見により自動車燃料もガソリンなど石油由来燃料が当たり前になった。

バイオ燃料については食料との競合が問題視されたため、人間の主食である主要穀物以外であれば抵抗が少ないのではということで2000年代半ばから非可食である草本や木質などを原料とするセルロース系エタノールの実用化の研究開発が進められている。梅木氏によると、大麻草はセルロースの含有量が多く、エネルギー作物としては有望だという。昨年の栽培解禁以来、大麻産業が一気に盛り上がりつつあるタイで、大麻がバイオエタノールの原料にもなるのか、興味深い。

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