タイ市場で新規事業開発を成功させるポイント

タイ市場で新規事業開発を成功させるポイント

公開日 2023.05.05

在タイ日系企業の新規事業開発のトレンド

タイ市場においては、現在多くの日本企業が新規事業開発を推進しています。その背景には、主に4つのポイントがあります。

一つ目は、「自動車業界におけるEV浸透による構造変化のリスク」です。EV(電気自動車)の製造・販売がタイで進むと、過去に日本企業が構築してきたサプライチェーンの優位性が崩れる可能性があり、自動車関連企業やそれらを顧客とした関連業界の企業が将来のリスクを感じており、「新たなことを始めなければ」という問題意識を持ち始めているのが実情です。「EV市場への適応」というど真ん中のテーマに取り組むことはもちろんですが、「EVが浸透した場合の新たなビジネス機会」を今から探るというアジェンダも抱えています。

二つ目は、EVにも関連しますが、他国企業の競争力が高まるリスクに備えた対応です。特に、中国企業・韓国企業の躍進が進むなかで、多くの業界で日系企業が既存市場でのシェアを奪われるリスクを感じています。そうしたシェア争いで競争優位性を築く戦略構築を進める一方で、自社のアセットを活用した新たな事業モデルへの転換も探索し始めています。また、事業開発とは少し毛色が異なりますが、タイ市場で存在感を増している中国企業を競合ではなく顧客と見なしてセールスを進める企業も出てきています。

三つ目は、人件費増加に対する対応です。もともとタイでは、製造拠点としての魅力が高く、多くの日系製造業が進出してきました。しかし、近年は周辺国と比べて人件費が上がり、製造拠点としての魅力が弱まってきています。そのため、単なるコスト優位性を強みとした事業運営から、付加価値の高い製品提供・サービス提供にシフトしようと考える日系企業が増えてきています。これは製造業だけでなく、営業人材やマネジメント人材の人件費が上がってきている非製造業でも同じことが言えます。

四つ目は、日本本社からの高すぎる期待です。いくつかの業界では、少子高齢化や円安が進む日本市場よりも、海外市場の方が魅力的に感じるようです。そこで、「タイは日系企業も多いし、BCG経済の推進など新たな事業機会が多そうなので、新規事業開発も取り組みやすいのでは?」という大きな期待を本社から背負っており、それらに「なんらかの形で応えようとするタイ拠点」という構図です。

そうしたなかで、タイ市場においては、新規事業開発を通して、第二・第三の事業の柱を作っていこうと、多くの企業が取り組んでいます。特に多いのが、エネルギー関連事業EV/自動車関連の事業環境/バイオ関連の事業住宅関連の事業農業関連の事業です。(図.1参照)

図.1 『在タイ日系企業の新規事業開発のトレンド』出所:LiB consulting(Thailand)Co.,Ltd.

新規事業開発のステップ

こうしたトレンドもあり、2021年の後半から急速に新規事業開発の取り組みが増えてきました。弊社では、既にタイに拠点がある日系企業だけでなく、これからタイに参入しようと考えている日本企業まで、多くの事業開発案件に携わってきています。そうした中で、弊社が提供している新規事業開発プロジェクトは以下の6つのステップとなります(図.2参照)。各プロジェクトが現在どのステージにいるかによってスタート位置は異なりますが、全体を通して外してはいけない重要なポイントは2つあります。

一つ目は、「新規事業の目的と目標の設定」です。多くの企業では、これらが明確になっていないため、事業開発担当者が疲弊しています。STEP1の段階で「どのような条件が揃ったら新規事業にGOサインが出せるか?」という評価指標やスコアブックを作ることが重要です。

二つ目は、「現在課題だけでなく、将来課題を探索すること」です。事業開発を目的に市場調査などを行うと、多くの場合は「顧客が現在困っていること(現在課題)」のみに焦点を当てがちです。しかし、現在課題については、ほとんどの場合、すでにそれに対応したソリューションやサービスがあり、後から参入しても利益率が低いビジネスにしかなりません。また、日系企業の一般的な意思決定のリードタイムを考えると、参入のスピード感が重視される現在市場においては、勝ち戦になりにくい傾向があります。それよりも、「今は困っていないものの将来困りそうな課題(将来課題)」や「顧客自身が気付いていないような潜在課題」を発見し、時間を掛けて開発を準備するようなテーマ設定の方が勝ち筋が見えやすくなるでしょう。

図.2 『新規事業開発のステップ』出所:LiB consulting(Thailand)Co.,Ltd.

新規事業開発の落とし穴と対策方針

最後に、多くの日系企業と事業開発のプロジェクトをご一緒させて頂く中で見えてきた“落とし穴“についても共有させてください。図.3に示した通り、主に、戦略・方針の問題、情報収集の問題、人の問題、組織環境の問題などが挙げられます。

その中でも特に多いのは、図の中の7番に記載されている「事業開発担当者の人選」に伴う問題です。タイ国内で新規事業開発をする以上はタイ市場を理解しているローカル社員を担当に指名しがちです。しかし、事業立ち上げ経験が少ない社員の場合は、自分でアイディア出しや提案をするよりも、トップマネジメントからの指示を待って取り組みがちなため、事業アイディアが出てこなかったり、出てきても質が低い・・・というケースがほとんどです。

これは、日系企業に勤務するローカル社員は、これまでは「決められた仕事を確実にこなすオペレーショナルスキル」が求められてきており、「新たなことを創造するクリエイティブスキル」を能力開発する経験が少なかったという背景があるからです。

そのため、新規事業開発の各ステップでは、ローカル社員任せにせず、「明確な方針付け」と「担当者のクリエイティブスキルの強化」、「組織環境の整備」を進めながら、「トップマネジメントの新規事業へのコミットメントを全社員に示すこと」が効果的です。

図.3 『新規事業開発の落とし穴』出所:LiB consulting(Thailand)Co.,Ltd.

タイでの新規事業開発に取り組む方へのオススメ講座

2023年6月ビジネスコース Day3-PM|6/22[木] タイにおける新規事業開発ワークショップ

在タイ日系企業における「新規事業開発フローを体験できるワークショップ」

日時:2023年6月22日(木)14:00~18:00(タイ時間)

会場:Mediator内セミナールーム(またはMajor Tower Thonglor 会議室)

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LiB Consulting(Thailand)Co.,Ltd. Managing Director

香月 義嗣 氏

東京大学工学部卒業、東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。2012年からリブコンサルティングにて勤務。東アジア・東南アジア各国で約180社、270プロジェクトのコンサルティング実績、約1万人への講演実績を持つ。2006年~2017年まで韓国・ソウルに駐在後、2018年よりタイ・バンコクに駐在。趣味は、マラソン・サッカー・飲み会幹事。著書に『アジア進出企業の経営「成功のメカニズム」(2023年3月出版 / プレジデント社)』、『日本企業が韓国企業に勝つ4つの方法(中経出版、日本語)』がある。

LiB Consulting(Thailand)Co.,Ltd.

Website : https://libcon.co.th/

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