東北タイ・コンケンの挑戦(上)ミトポンとBCG、そしてスマートシティーへ

東北タイ・コンケンの挑戦(上)ミトポンとBCG、そしてスマートシティーへ

公開日 2023.12.13

タイ日投資リサーチ(TJRI)編集部は今年9月下旬にタイ東北地域「イサーン」の中心に位置するコンケン県の県庁所在地ムアンコンケン郡(コンケン市)を訪問し、製糖大手ミトポンが開設した「コンケン・イノベーション・センター(KIC)」や、地元民間企業主導で進められているスマートシティープロジェクト、そして民間企業と大学連携などによるコンケン経済活性化の取り組みを取材した。極端なバンコク1極集中であるタイが「中所得国の罠」からの脱却に向けた1つのカギを握る地方経済の活性化、そしてバンコクと地方の格差是正につながるのか、現場からその手がかりを探る。

コンケン・イノベーション・センター

コンケンイノベーションセンター
コンケンイノベーションセンター

「コンケンはとても良いイノベーション・エコシステムを持っている。イノベーションは学界と産業界が連携しないと起こらない。コンケンには大企業、政府機関、そして大きな大学がある。さらに大企業では製糖大手ミトポン(Mitr Phol)、車両製造・販売チョー・タウィー(Cho Thavee)がいて、大手財閥チャロン・ポカパン(CP)グループも事業を行っている」

コンケン市の中心街に立地、正式オープン間近だというコンケン・イノベーション・センター(KIC)内で、今年9月20日に取材に応じてくれた同センター社長のタック・シーラッタノーパート氏はコンケンの強みをこう表現した。

地上28階建というコンケンでは高層の同ビルは実は「トムヤンクン危機(アジア通貨危機)」があった1997年建設されたものの、完成しないまま野ざらしになっていた古い構造物をミトポンが取得し、「イサーンのイノベーションのハブ」にするためにリノベーションしたものだという。9~10階にはミトポン・イノベーション&リサーチ・センターの研究施設があり、その他国内外の企業の入居を目指すオフィス部分、コワーキング・スペース、さらにホテル、レストランなど商業施設も順次オープンしつつあるという。

BCGモデルとミトポンのSカーブプラン
BCGモデルとミトポンのSカーブ成長戦略

タック氏は、ミトポンの「From Waste to Value」という事業コンセプトや、①製糖業②再生可能エネルギー(バイオマス、エタノール、肥料)③バイオ化学(乳酸、イースト、機能性飼料)という3世代にわたるビジネスモデル展開とバイオ・循環型・グリーン(BCG)との関係を報告。基底にはサトウキビなどの農産物があるとし、エタノール、バイオプラスチック、食品・飼料、化粧品、医薬品まで至る付加価値上昇のピラミッドの構造について説明した。また、エタノールをバイオマテリアルや持続可能な航空燃料(SAF)に転換する研究開発を進めていることを明らかにした。

ミトポンの戦略を説明するタック氏
ミトポンの戦略を説明するタック氏

一方、タック氏はコンケンのスマートシティーについては、台湾の通信会社である「中華電信(Changhwa Telecom)」と、充電装置や電動バイク、自動運転、スマートビルディングの技術について交渉しているほか、KICのビルに太陽光パネルを設置し、ビルで使う電気の50%を賄っていると説明。さらに、監視カメラ、充電装置、通信機、気象監視、緊急連絡装置、情報ディスプレーなどスマートコミュニティーの基本インフラを装備した「スマートポール」をまず、KIC周辺に4基設置した後、KICとコンケン大学を結ぶ3キロの道路に100基設置するとの計画を明らかにした。

スマートコミュニティーの基本インフラを装備した「スマートポール」
スマートコミュニティーの基本インフラを装備した「スマートポール」

コンケンの地理的な優位性とは

また、ミトポン・イノベーション&リサーチ・センターのスイッパ・ワナサトップ副社長は、もともとミトポンは研究開発(R&D)拠点をバンコクに置いていたが、1997年に本拠地であるチャイヤプーム県プーキアオ地区に移転。さらに「オープン・イノベーション」を目指すには不十分だと気付き、隣県であるコンケン県のKIC内に再移転したなどと経緯を説明。KICの狙いは「科学とソフトパワーの融合」を目指すことで、例えば食品分野では植物肉のスタートアップ企業に投資しているという。

さらに、KICは「ミトポンが強みを持つ5つの分野(食品、飼料、燃料、医薬品、デジタル)に焦点を絞り、技術を持っている国際的企業との連携を望んでおり、両社の強みを合わせて新製品・新サービスを迅速に市場投入する」と強調。「例えば、化粧品や栄養補助剤などで日本企業との連携も歓迎する」と呼び掛けた。一方、医療機器分野では既に多くの日本企業をコンケンに迎えており、地元大手病院とのマッチングも行っていることを明らかにした。また、コンケンはウェルネスシティーになるというビジョンを持っており、セター首相にも既に提案。未来の食品、機能性成分が重点分野になるだろうとの認識を示した。

スイッパ氏はまた、コンケンの強みとして、中国からラオス経由の中速鉄道が計画され、また東西経済回廊が4年後には完成する予定だといった立地的な優位性を指摘した上で、「イサーン地域にはラオスやカンボジアなどとコネクションを持つ若い起業家が増えている」こともアピール。さらに、「毎週のように中国から視察団が来ている。例えば農業分野ではドローン会社などだ」と説明。中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)市場に拠点を作りたいようで、投資も始まっていると述べた。その上で、スタートアップを含む企業には「コンケン市だけでなく大メコン圏(GMS)市場まで見るべきだ。GMSは生活スタイルも似ており、コンケンで市場評価も可能だ」とアドバイスした。

(サラーウット・インタナサック、増田篤)

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TJRI編集部

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