日本の食農スタートアップ紹介③ 『EF Polymer』農家の干ばつ対策となる超吸収性ポリマーを開発 ~AgriTech Bridge 2023より~

日本の食農スタートアップ紹介③ 『EF Polymer』農家の干ばつ対策となる超吸収性ポリマーを開発 ~AgriTech Bridge 2023より~

公開日 2023.07.11

農林中央金庫などJAグループとタイのカシコン銀行が5月17日に開催した日本の食農スタートアップ企業によるピッチイベント、「AgriTech Bridge 2023」の参加企業紹介の第3回は、果物の皮などの作物残渣から100%有機で、完全生分解性のある超吸収性ポリマーを開発し、農家の干ばつ対策を支援する「EF Polymer(EFポリマー)」だ。同社の下地邦拓COOのプレゼンテーションを報告する。

インドと日本のチームが連携

EFポリマーは、「Empower farmers. Fight against drought. Promote sustainable agriculture.」を合言葉に、干ばつに悩む農家に対し真に持続可能なソリューションを提供し、持続可能な農業の実現を支援しています。世界人口が80億人になる中で、人口が世界一になるインドのチームと日本のチームが連携し、日本とインドを中心に世そこで取れる作物残渣をア界的な展開をしているスタートアップです。

今日は次の3つのことを知っていただければと思います。

(1)EFポリマーは、みかんの皮や、バナナの皮など作物の残渣から原材料を抽出し、当社の特許技術を駆使して重合化することで、完全オーガニック、完全生分解性を有する超吸水性ポリマーを製造している会社です。

(2)今、タイでも干ばつが非常に深刻な状況になっていると聞いていますが、われわれのポリマーを利用することで水が少ない環境でもこれまで通りの農業を実践・実行し、収量を上げることができます。

(3)当社ポリマーは日用品や衛生製品を含む農業以外の分野でも、給水材、ゲル、増粘材などとして利用することが可能です。化学ポリマーを製造している企業や、化学ポリマーを利用した製品の製造・販売をされている企業の、環境に配慮した事業トランスフォーメーションのパートナーになれる可能性があります。

持続可能な保水ポリマーを

世界人口の約4~5割の方々がすでに干ばつに直面しています。人間が利用可能な淡水の約7割が農業用途で利用されています。これら状況の掛け合わせは、世界中の生産者の水不足問題につながり、作物が「水ストレス」に直面すると、その収量は約3~4割減ってしまいます。

例えばタイには、キャッサバ、サトウキビ、コメがありますが、水不足は発芽や根張り、その後の作物の生育に大きな影響をもたらし、農家はかなり困難な状況に陥ります。このような水不足がもたらす課題にタイやインド、日本だけでなく、先進国である欧州やアメリカ、世界中のさまざまな国が直面しています。

どうすれば、水問題に悩む農家を真に持続可能な方法で支援できるのか。この問いに取り組んでいたのが、インドの干ばつ地域にある300人の農村で生まれ育ったEFポリマーの創業者でCEOのナラヤン・ラル・ガルジャールです。

当時出回っていたソリューションは短期的には確かに土壌の保水力を上げ、肥料の使用量を減らすことができるかもしれません。しかし、中長期的に見ていくと、そのソリューション自体が土壌を、その先の地下水を、さらにその先の海洋を汚染していることに気づき、真に持続可能なソリューションの必要性を感じていました。そんな時に着目したのが超吸水性ポリマーです。そして、「ポリマー」は化学物質が含まれているのがあたりまえという現状に疑問を持ち研究を続けたことで開発できたのが完全オーガニック、完全生分解性を有するポリマーでした。

肥料を2~3割削減可能で、収量増も

EF Polymerの概要
「作物残渣を使用して作られるEFポリマー」出所:EF Polymer

EFポリマーはまず、原材料がユニークで、これまで廃棄の過程で二酸化炭素(CO2)を排出していたミカンの皮やバナナの皮などの作物残渣を、当社特許技術を駆使してアップサイクルすることで製造しています。

2つ目の特徴としては、EFポリマーを土壌に撒くことで、土壌中で水の吸水・放出を約半年間継続し、1年で完全に生分解することがあげられます。この機能により、生産者は水の利用量を約4割削減することができます。日本のように水が豊富な国は「水を削減する」という発想になりますが、地球温暖化などの影響で利用可能な水の量が物理的に少なくなっている地域も多く、それらの地域で農業に携わられている方々が厳しい環境でも従来に近く、さらに良い形で農業を行うことをお手伝いできると考えています。

加えて、当社ポリマーは水に溶け出した肥料を保持しておくことができるため、生産者の肥料利用量を約2割減らすことができます。水、そして栄養素をとどめておくことができます。効率的に給水し、作物の効果的成長をサポートすることで15%ほど収量が増えるという結果もあります。

EFポリマーの撒布方法は、種にコーティングをしたり、土壌に混ぜたりします。育苗をされている方、ポットをつくられている方、マルチを作られている方も混ぜ込んでいただくことで保水力を上げられます。欧州や米国では、広大な土地にセスナを利用して撒くという方法もあります。

完全オーガニックで、土づくりにプラス

EF Polymerを選ぶ理由
「EFポリマーの独自性」出所:EF Polymer

ではなぜ、EFポリマーを利用すべきなのか。1つ目はわれわれのポリマーは今、既にある化学ポリマーと比較して農業に特化したポリマーということです。

そして2つ目は、これまで保水材には化学物質、化学ポリマーや生分解性をうたうハイドロジェルもありますが、化学物質を含むものだと化学反応を起こしてしまい、保水力を失ってしまうという課題がありました。EFポリマーは完全オーガニックなので土中の肥料などと反応せず、安定した保水・保肥の機能を提供することができます。

また、EFポリマーを利用することで土壌中の微生物や、「気相」を増やすことができます。当社のポリマーを活用することで土壌の「団粒構造化」を促進し、土づくりにプラスになることも、既存のソリューションと比較してEFポリマーの強みではないかと考えています。

さらに、EFポリマーはみかんの皮、バナナの皮を利用して製造しており、多糖類を抽出してそれを重合化するというところに特許技術を有しています。このため、タイで採れる作物の残渣をアップサイクルし、当社製品を製造する可能性があります。

沖縄、そしてタイで循環型システムを

私たちは日本の最南端の沖縄に住んでいますが、そこで取れる様々な作物残渣をアップサイクルすることで、多様な原材料からのポリマー製造も検討しています。そうするとタイで栽培されている様々な作物残渣をアップサイクルし、当社ポリマーを製造することができるかもしれません。これは地産地消を推進できるのみならず、輸送コストの削減にもつながります。これで農家の水問題、肥料の価格高騰問題への対策をサポートし、残渣を使ってわれわれのポリマーを作る。われわれはこれを「エコフレンドリーポリマーの循環型、地産地消型のシステム」と呼んでいます。これを実現できるかもしれないことに私はワクワクしています。

世界の農家人口は9億人、タイにも1300万人の農家がいます。インドには、日本の総人口くらいの農家がいます。日本は大体150万人くらい。これらの農家は今、干ばつなど水問題、肥料の価格高騰に悩んでいます。また、今後も世界的人口の増加と合わせて世界の農業市場も大きくなっていくと想定されています。その中で、気候問題、干ばつ問題は深刻化し、食糧、そして水問題にどのように取り組むかが課題です。われわれは世界中のどの生産者、インドの300人の村にいる生産者にも手に取っていただけるような製品作り、ビジネス構築を推進していきたいと考えています。

われわれは今、インド、日本を中心に5カ国で事業を展開していますが、世界のマーケットで多くのチャンスがあると考えています。ビジネスとしてはセールス、ライセンシング、コンサルティングなどさまざまなラインを準備していますが、まずはセールスで、既にEFポリマーを全世界で約100トン販売し、約1万エーカー、約1万戸の農家に導入いただいています。

タイでも各種機関との連携模索

EF Polymerの可能性
「農業分野以外での可能性」出所:EF Polymer

EFポリマーは、農業分野だけではなくて日用品、生理用のナプキンやオムツで利用される吸水シートや、シャンプー、化粧品などの増粘剤、皆様が使っているような保冷材の中身のゲルといったものにも転用できる可能性があります。

今期は3月からスタートし、80トンが目標でしたが、既に約55トン販売しています。これからさらに、日本だけでなくインド、欧州ではフランス、米国、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)地域ではタイを中心に事業を展開していきたいと考えています。2023年4月にシリーズAで5.5億円の資金調達を完了しています。

今、タイで実証実験を行い、タイでどのような事業展開ができるかを考えており、研究開発(R&D)などで公的機関、民間研究機関と連携し、どのような価格であれば農家に手に取っていただけるかも一緒に検討させていただければと思っております。われわれのポリマーは完全生分解、完全オーガニック、そして持続可能な農業、持続可能な事業トランスフォーメーションを支援できる会社です。

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TJRI編集部

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